国際ワークショップ
バルク金属ガラス研究

2009年09月28日

2009年8月、WPI-AIMR主催によるBMG(Bulk Metallic Glasses)に関連したWorkshopがフランス・グルノーブル市で4日間開かれた。20ヶ国から70名の研究者が一堂に会し、52件の口頭発表と13件のポスターセッションが行われた。WPI-AIMR主任研究者でInstitut Polytechnique Grenoble (INPG)のYavari教授の計らいで、ワークショップは大成功に終わった。

 Yavari教授(上)がオーガナイザーを務めた国際ワークショップは、2009年8月に4日間にわたりグルノーブルのMaison du Tourism(下)で開かれた。
 Yavari教授(上)がオーガナイザーを務めた国際ワークショップは、2009年8月に4日間にわたりグルノーブルのMaison du Tourism(下)で開かれた。

WPI-AIMR主任研究者でInstitut Polytechnique Grenoble (INPG)のAlain Reza Yavari教授の計らいで、WPI-AIMR主催によるBMG(Bulk Metallic Glasses)に関連したWorkshopがグルノーブル市内のMaison du Tourismで4日間開かれた。20ヶ国から70名の研究者が一堂に会し、52件の口頭発表と13件のポスターセッションが行われた。

話題は基礎から応用に渡って多彩であった。中心はBMGの機械的性質で、結晶には見られない強度の起源を明らかにしようとする試みが多かった。その中心的な問題は、BMGの変形に伴うshear bandsの実体である。

シンクロトロンの回折で原子結合の解析やSEMや電子顕微鏡による観察、BMGの原子結合のシュミレイションなどの発表があった。特にshear bandsを形成するミクロの環境場を含めたshear bands formation zones(STZs)など、shear bands形成の際の協同現象について真剣な討論があった。要するに機械的変形の理解が全ての応用の基本であり、このshear bandsなる現象の解明が鍵である。以前に半導体のシリコン単結晶は無転位化が鍵になったが、BMGではそれがshear bandsという現象に相当している。  

応用の際に、加工の自由度を高めるためにはガラス化する直前の過冷却の温度幅を大きくすることが望まれる。すなわちTg(ガラス転移点)を自由にコントロールする必要がある。そのためには高性能のBMGを形成する原子の種類と組成比が重要である。したがって、いかにしてBMG化する組成を見出すか、その指導原理を明らかにする努力が重ねられている。共晶の三元素の相図を出発点として、原子半径、エレクトロネガティビティなどを手掛かりに、実験と照合して議論をする報告も多かった。

最後に全員の総合討論がYavari教授の司会でなされた。東北大学の井上総長も発言を求められて、WPIの意図と組織について説明がされた。今後の方向として、①質の高い研究成果、②異専門間の融合研究(Fusion Research)、③応用の展開の三方面から厳しい評価があることを伝えると同時に、WPIの国際性をもっと拡大し、若年の優秀な研究者の登場を希望した。

 図1: ワークショップには、20ヶ国から70名の研究者が一堂に会した。
 図1: ワークショップには、20ヶ国から70名の研究者が一堂に会した。

ケンブリッジ大学のA. L. Greer教授は、応用に関して①sustainabilityが重要なターゲットになり、清浄な空気や水の環境維持に役立つBMGの応用、②磁性的な性質の活用による省エネルギー、③医学的応用、④マイクロデバイスなどがあることも指摘した。

最後に、各国のBMGに対する関心を示す一指標になるかも知れないので、国名と参加人数を示しておく (図1)。

2009年8月29日
グルノーブルにて 小松 啓 (東北大学名誉教授)