消費エネルギー障壁の打破: 相変化メモリの技術革新

2024年12月23日

窒素ドープCr2Ge2Te6により、次世代メモリデバイスの消費エネルギーを低減

本研究を主導した双助教

より効率的な不揮発性メモリ(NVM)デバイスの実現に向けて、相変化材料(PCM)が注目されている。PCMを用いた相変化メモリデバイス(PCRAM)は他のNVM技術と比較して、速度、耐久性、微細化の面で優れた性能を発揮する可能性が高いからだ。

従来のPCRAMは高コストでエネルギー消費量も大きいため、主に高性能コンピューティング、ニッチ市場、実験的技術にしか採用されていなかった。一方、その独自の特性を活かし、より高速で効率的なデータストレージが実現されてきた。 AIMRの双逸助教は、「メモリデバイスへのPCMの応用において、『リセット』プロセスの消費エネルギーが課題の1つとなっています。このプロセスでは、結晶相PCMを溶融急冷してアモルファス相に変化させるために、大量のジュール熱が必要です」と、説明する。

2024年、双助教、須藤教授らの研究チームは、PCMの候補材料として、窒素ドープCr2Ge2Te6(NCrGT)の特性を調べた。その結果、NCrGTでは、メモリデバイスのアモルファス相化(リセットプロセス)に必要なエネルギーを大幅に削減できることを明らかにした1

研究チームは、高度な接触抵抗測定、電子顕微鏡技術、分光技術を組み合わせ、電極界面付近の非常に限定された領域のみが相変化(アモルファス相/結晶相変化)していることを発見した。また、メモリセルにおけるこの微小な相変化が、接触抵抗が支配的な伝導プロセスに起因することを明らかにした。

「私たちが開発した接触抵抗PCMでは、PCMのバルク特性に依存せず、相変化領域を微細化することができます。また、従来のバルク抵抗を利用したPCMと比較して、リセットプロセスに必要なエネルギーを90%削減することが可能です」と、双助教は語る。

研究チームは現在、窒化物PCMなど、溶融せずに結晶/結晶相転移が可能な物質を対象とし、よりエネルギー効率の高いPCMを探索している2

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Shuang Y., Ando D., Song Y. and Sutou Y. Direct observation of phase-change volume in contact resistance change memory using N-doped Cr2Ge2Te6 phase-change material Applied Physics Letters 124, 061907 (2024). | article
  2. Shuang Y., Mori S., Yamamoto T., Hatayama S., Saito Y., Fons P.J., Song Y.-H., Hong J.-P., Ando D. and Sutou Y. Soret-Effect Induced Phase-Change in a Chromium Nitride Semiconductor Film ACS Nano 18, 21135–21143 (2024). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての情報及びデータは同著者から提供されたものです。