キラルセンサー: ハイブリッドシリカナノヘリックスがもたらす進展

2024年11月25日

新たな水分散性プラットフォームによるエナンチオ選択的認識およびキラル検出感度の向上

本研究を主導した小田玲子博士

階層的なキラル材料設計の目標の一つは、水溶液中でエナンチオマー(鏡像異性体)を選択的に認識でき、水に分散可能なセンサーを開発することである。このセンサーは、キラル分離、触媒、汚染物質の検出など、広範な分野での応用が期待されている。

AIMRの小田玲子主任研究者は、「従来のキラルセンサーの開発では、特定のニーズに応じて新しいセンサーをゼロから構築する必要がありました。より優れた戦略として、キラルの検出感度を高め、より広範的にさまざまなキラル、アキラル成分に幅広く対応できるプラットフォームを開発することが求められていました」と、語る。

近年、小田博士率いる研究チームは、この戦略に従い新たな水分散性プラットフォームを開発した1。このプラットフォームは、無機物質シリカナノヘリックスをベースとしており、さまざまな分子や粒子をナノヘリックス構造内に閉じ込めることでキラル誘導、キラル認識が観察されてきた。

本研究においては、キラルとアキラルの両方のポルフィリン誘導体をナノヘリックス構造内に閉じ込めることで、ポルフィリン分子の光学活性が10倍に増幅されることを実証した。また、水分散性センサーのキラル認識の感度が大幅に向上することを見出した。

「本研究では、ポルフィリン系受容体を水分散性のシリカナノヘリックスに組み込むことで、非常に高感度なキラルセンサーを開発することに成功しました。しかし特に重要なのは、このような無機ナノヘリックスを革新的に活用することで、各ケースごとに特別なセンサーを開発しなくても、さまざまなキラル分析物を検出できる汎用的なプラットフォームを実現できた点です」と、小田博士は説明する。

研究チームは、フランス、イタリア、エストニア、アイルランド、フィンランドのさまざまなグループと引き続き協力し、最終目標であるキラル分離が可能なカラムの実現を目指している。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Anfar Z., Kuppan B., Scalabre A., Nag R., Pouget E., Nlate S., Magna G., Di Filippo I., Monti D., Naitana M.L., Stefanelli M., Nikonovich T., Borovkov V., Aav R., Paolesse R. and Oda R. Porphyrin-Based Hybrid Nanohelices: Cooperative Effect between Molecular and Supramolecular Chirality on Amplified Optical Activity The Journal of Physical Chemistry B 128, 1550-1556 (2024). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての情報及びデータは同著者から提供されたものです。