トポロジカルデータ解析: アモルファスゲルマニウムの熱伝導性を解明

2024年10月15日

パーシステントホモロジーで無秩序な物質の熱伝導に影響する構造的特徴を明らかに

本研究を主導した赤木准教授

周期的な原子配列を持たないアモルファス(非晶質)材料は、結晶性材料とは異なるユニークな性質を示すことが知られている。そのため、これらの微視的構造と巨視的特性を結びつける物理モデルを理解することが、材料の新たな用途を見出す鍵となる。

しかし、周期的な構造を持たないゆえに、微視的構造の特徴と熱伝導などの巨視的特性の相関性を明らかにすることは容易ではなく、大きな課題となっていた。

AIMRの赤木准教授は、「アモルファス材料中の局所的な原子構造に関して、X線回折などの従来法を用いて得られる情報は非常に複雑です。原子の局所的なネットワークを明確に理解しなければ、熱伝導に影響を与える構造的特徴を特定することは実質的に不可能です」と、説明する。

近年、赤木准教授とAIMRの研究チームは、パーシステントホモロジーに基づくトポロジカルデータ解析(TDA)を使用し、アモルファスゲルマニウム(a-Ge)の構造的特徴を解析する新たな手法を提案した1。これにより、従来の課題を克服し、原子ネットワークが熱伝導に与える影響をより深く理解できるようになった。

具体的には、透過型電子顕微鏡と第一原理分子動力学シミュレーションによって得られたa-Ge構造を比較しながら解析するために、パーシステントホモロジー(内部の「穴」に基づいて離散データを定量化する数学的枠組)を活用した。その結果、a-Ge熱伝導において、結合長が長い5個または6個の点からなる原子鎖のリングが重要な役割を果たす可能性のあることを発見した。

赤木准教授は、「その後の研究では、a-Geとは全く異なるタイプの材料である金属有機構造体(MOF)に同じ手法を適用してCO2吸着に影響を与える構造記述子を特定し、本手法の汎用性を実証しました2。いずれの研究成果においても、組成や製造プロセスを反映した微視的な構造が、物理的・化学的モデルを通じて材料の巨視的特性に与える影響を明らかにすることができました1,2」と、研究の意義について語っている。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Wu Y.-J., Akagi K., Goto M., and Xu Y. Topological data analysis of TEM-based structural features affecting the thermal conductivity of amorphous Ge International Journal of Heat and Mass Transfer 221, 125012 (2024). | article
  2. Akagi K., Naito H., Saikawa T., Kotani M. and Yoshikawa H. Linear regression model for metal–organic frameworks with CO2 adsorption based on topological data analysis Scientific Reports 14, 12021 (2024). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての情報及びデータは同著者から提供されたものです。