規則性炭素化物構造体: タンデム触媒設計の新戦略

2024年05月27日

効率的なCO2転換の実現に向けた二元金属含有触媒の合成技術を開発

本研究を主導した吉井助教

規則性炭素化物構造体(ordered carbonaceous frameworks; OCF)は、金属ポルフィリン分子結晶を炭素化することにより得られる材料であり、原子状に分散した金属種に加え、均一なミクロ細孔と高い比表面積を有することを特徴とする。

こうしたユニークな特性は分子前駆体の設計によって自在に調整可能であり、このことからOCFはエネルギー貯蔵・変換や電極触媒への応用に向けて理想的なプラットフォームであるといえる1

2023年、西原洋知教授と吉井丈晴助教が率いるAIMRの研究チームは、この戦略を用いてOCF研究にブレークスルーをもたらす論文を発表した2。研究チームは、同一の骨格を有するポルフィリン分子にCoおよびCuを配位させ、これを前駆体としてCoあるいはCuのシングルメタルOCF、さらにはCo-CuバイメタルOCFの合成に成功した。

吉井助教は「本研究の重要な点は、エネルギー分散型X線分光(EDX)法による元素マッピングおよびサイクリック・ボルタンメトリー測定によって、バイメタルOCF中のCoとCuが原子レベルで均一に分散しており、CO2転換の触媒として協奏的に作用し得ることが示されたことです」と語る。

現在研究チームは、Co-CuバイメタルOCFを触媒として用い、CO2からCO、COからC2化合物へと逐次的に転換する方法を研究している。

「単原子Co触媒はCO2をCOに還元することに優れている一方、Cu触媒はCOをC2化合物へと転換するのに優れています。バイメタルOCFのシナジー効果を利用して、CO2をC2化合物へと効率的に転換するタンデム触媒を創製することができれば、この研究のインパクトはCO2転換技術にとどまらず、関連分野の幅広い領域にまで波及すると期待されます」と吉井助教は本研究の展望について述べている。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Yoshii T., Chida K., Nishihara H. and Tani F. Ordered Carbonaceous Frameworks: A new class of carbon materials with molecular-level design Chemical Communications 58, 3758-3590 (2022). | article
  2. Chida K., Yoshii T., Hiyoshi N., Itoh T., Maruyama J., Kamiya K., Inoue M., Tani F. and Nishihara H. Bimetallic ordered carbonaceous frameworks from Co- and Cu-porphyrin bimolecular crystals Carbon 201, 338-346 (2023). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての情報及びデータは同著者から提供されたものです。