逆設計: 目的の二次元構造を再現するパッチ粒子系を開発

2023年08月28日

自己組織化を逆から解き明かす

研究について議論するLieu特任助教(写真右)と義永准教授(写真左)

近年、新素材の発見や最適材料の選定に『逆設計』を利用する方法が注目されている。逆設計とは計算モデリング、シミュレーション、機械学習のアルゴリズムによる解析を行い、目的とする物性から最適な原子構造や分子構造を実現するモデルを逆算する方法だ。

逆設計を従来の手法と組み合わせることで、材料の早期発見につながると同時に、構造と物性の相関についてより理解が深まることが期待されている。

2022年、AIMRのLieu特任助教と義永准教授らの研究チームは、カゴメ格子や十二角形準結晶などの二次元の自己組織化構造を再現できるパッチ粒子系を開発した1。このモデルでは相対エントロピーに基づく機械学習のアルゴリズムを用いており、目的とする構造に必要なパッチ粒子を決定することができる。

本研究を主導した義永准教授は、「今回、逆設計で開発したパッチ粒子系により、準結晶の構造形成における動力学的反応経路など、自己組織化の一部の側面について調べることができるようになりました2。これらの成果を活かして、今後は温度や圧力の変化、あるいは時間に依存した流動や変形といった動的過程の影響を明らかにしたいと考えています」と、今後の進展を語っている。

研究チームは現在、強化学習を用いて、自己組織化した準結晶の温度を制御する手法の確立に注力している。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Lieu, U.T. & Yoshinaga, N. Inverse design of two-dimensional structure by self-assembly of patchy particles. The Journal of Chemical Physics 156, 054901 (2022). | article
  2. Lieu, U.T. & Yoshinaga, N. Formation and fluctuation of two-dimensional dodecagonal quasicrystals. Soft Matter 18, 7497-7509 (2022). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての情報及びデータは同著者から提供されたものです。