燃料電池触媒: 白金を超える高活性を実現

2019年12月23日

白金含有触媒の酸素還元能を上回る安価な非白金触媒が開発された

白金含有触媒よりも高活性な新しい触媒の分子構造を示す模式図(灰色の球はカーボンナノチューブの炭素原子、黄色の球は鉄原子、青色の球は窒素原子、白色の球はアザフタロシアニン環の炭素原子、赤色の球は酸素原子、緑色の球は水素原子を表す)。

© 2019 Hiroshi Yabu and Hiroya Abe

安価な燃料電池の実現につながりそうな新しいタイプの非白金触媒が、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らによって開発された1。この触媒は、白金含有触媒をも上回る高い触媒活性を示すだけでなく、温和な条件下で低コストで作製できる。

水素と酸素を反応させて水を生成することによって発電する水素燃料電池は、電気自動車や家電向けの非常に魅力的なクリーン電源である。しかし、正極(空気極)で起こる酸素還元反応を最も効果的に促進する触媒には貴金属である白金が含まれていて高価なため、商業利用が阻まれている。この問題は、正極に同じく酸素還元触媒を用いる金属空気電池でも生じている。

燃料電池や金属空気電池の性能向上と低コスト化を目標に、材料科学者たちは触媒活性の高い安定な非白金触媒を探索してきた。

今回、AIMRの藪浩准教授と阿部博弥助教らは、求められる全ての条件を満たす触媒を開発した。材料が安価かつ作製が容易で触媒活性が高く、安定性に優れた触媒である。

この触媒は、鉄アザフタロシアニン(環状につながった四つの芳香環に囲まれた鉄原子からなる錯体)で、多層カーボンナノチューブ表面を単分子状にコーティングすることによって作製された。

研究者らは当初、作製した触媒がここまで効果的とは予想していなかったという。藪准教授は、「驚きました。フタロシアニンの外側のベンゼン基をピリジン基に置き換えてカーボンナノチューブに吸着させただけで、白金系触媒よりも優れた触媒活性を実現できたのですから」と語る。「我々の知る限り、カーボンナノチューブの分子修飾に基づく触媒としては最高の活性を示すものです」。研究者らは、この高い活性が、アザフタロシアニン環における窒素原子の位置に起因することを明らかにした。

この触媒にはもう一つ長所がある。他の非白金触媒とは違い、作製に高温を要しないのだ。藪准教授は、「アザフタロシアニン誘導体は有機溶媒に溶け、カーボンナノチューブに容易に吸着します。これは、焼成法を用いる触媒作製法と比べて大きな利点となります。焼成法では、複雑な高温プロセスと条件の適切な制御が必要になるからです」と説明する。

研究チームは、この触媒を世界中に供給するために東北大学発ベンチャー「AZUL Energy株式会社」を設立した。さらに、より高い触媒活性を示すフタロシアニン誘導体を探索しようと、理論計算も行っている。藪准教授は、「理論と実験の両方を取り入れたこうした共同研究が、さらに多くの高機能材料の開発につながると考えています」と語る。

References

  1. Abe, H., Hirai, Y., Ikeda, S., Matsuo, Y., Matsuyama, H., Nakamura, J., Matsue, T. & Yabu, H. Fe azaphthalocyanine unimolecular layers (Fe AzULs) on carbon nanotubes for realizing highly active oxygen reduction reaction (ORR) catalytic electrodes. NPG Asia Materials 11, 57 (2019). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。