トポロジカル相: 2種類の新型フェルミ粒子の発見

2019年06月24日

トポロジカル結晶の内部で準粒子としてのみ存在し得る2種類のフェルミ粒子が発見された

コバルトシリサイド中で発見された、2種類の新型フェルミ粒子のうちの片方の存在を示す角度分解光電子スペクトル。
コバルトシリサイド中で発見された、2種類の新型フェルミ粒子のうちの片方の存在を示す角度分解光電子スペクトル。

参考文献1より許可を得て転載。© 2019 by the American Physical Society

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らが、トポロジカル物質中で2種類の新型フェルミ粒子を発見した1。これらのフェルミ粒子は、以前別の物質系で発見されたものとは異なり真空中では粒子として存在できないことから、今回の成果は特に注目に値する。

素粒子にはいくつかの種類があり、整数スピンを持つ粒子はボース粒子、半整数スピンを持つ粒子はフェルミ粒子と呼ばれる。最もよく知られているフェルミ粒子は、1/2スピンを持つ電子である。

場の量子論によると、真空中のフェルミ粒子はさらにディラック粒子、ワイル粒子、マヨラナ粒子の3タイプに分類される。このうち、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)などの巨大な素粒子加速器で行われた高エネルギー物理学実験で粒子として観測されているのは、ディラック粒子だけである。しかし、ディラック粒子とワイル粒子は、表面特性がバルク特性と大きく異なるエキゾチック系であるトポロジカル物質中で、準粒子(物質中で粒子のように振る舞う励起状態)としても発見されている。

今回AIMRの佐藤宇史教授らは、コバルトシリサイド(CoSi)結晶中で電子のエネルギー準位をシンクロトロン放射光を用いて調べることによって、これら3タイプのいずれにも属さない新型のフェルミ粒子を2種類発見した。これらは共に、電子が結晶中で相互作用した結果生じる準粒子として存在する。

「よく知られたディラック粒子やワイル粒子とは異なる、新たなフェルミ粒子が見つかったのですから、非常に面白い発見だと言えます」と佐藤教授は説明する。「これをきっかけに、シンクロトロン放射光を用いた、多様なトポロジカル物質中での新型フェルミ粒子の探索が進むことでしょう」。

今回の新型フェルミ粒子の探索は、「カイラル結晶構造をとるCoSiなどの物質内部には、新型のフェルミ粒子が存在するはずだ」という、2年前に発表された理論予測に着想を得たものだ。こうした結晶に特有の点群対称性が、対称性の高い自由空間には存在し得ないフェルミ粒子の存在を可能にするという。

佐藤教授によると、解析に使えるほど清浄で平坦なCoSi試料を作製するのは大変だったという。彼はこの過程を、「ミリメートルサイズのバルクCoSi結晶を50回以上も劈開しました」と振り返る。「100ミクロン×100ミクロンの非常に狭い領域に十分平坦な面を得ることができたのは、そのうちほんの数回だけでした」。

今回の成果は、将来、実用的な応用につながる可能性がある。佐藤教授は、「応用はまだ先のことになりますが、今回の発見は、新型フェルミ粒子を利用する次世代エレクトロニクスデバイスの実現に向けて道を開く可能性があります」と言う。「ノーダルフェルミ粒子は概して移動度が高いので、高速デバイスに有用かもしれません。また、カイラリティーを持つため、オプトエレクトロニクスデバイスや磁気エレクトロニクスデバイスへの応用も考えられるでしょう」。

References

  1. Takane, D., Wang, Z., Souma, S., Nakayama, K., Nakamura, T., Oinuma, H., Nakata, Y., Iwasawa, H., Cacho, C., Kim, T. et al. Observation of chiral fermions with a large topological charge and associated Fermi-arc surface states in CoSi. Physical Review Letters 122, 076402 (2019). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。