リチウム空気電池: 正極触媒をグラフェンでサンドイッチ

2015年11月30日

原子1個分の厚さしかない炭素層の層間に酸化ルテニウムナノ粒子を挟むことで、リチウム空気電池の性能が向上することが明らかに

2層の窒素ドープグラフェンの間に酸化ルテニウムナノ粒子(赤色の球)を挟んで正極に用いることで、軽量で高性能なリチウム空気電池ができる。 © 2015 WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim
2層の窒素ドープグラフェンの間に酸化ルテニウムナノ粒子(赤色の球)を挟んで正極に用いることで、軽量で高性能なリチウム空気電池ができる。

© 2015 WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の研究者らが、充電式リチウム空気電池の正極にナノ粒子触媒を担持させたグラフェンを用いることで性能を著しく向上することに成功した。

リチウム空気電池のエネルギー密度は従来のリチウムイオン電池の約10倍。加えて、電池反応で主要な役割を担う正極活物質である酸素は周囲の空気から得ることができ、正極に蓄える必要がないため、重量もはるかに軽い。

リチウム空気電池は、負極の金属リチウム、電解液、正極の多孔質材料から構成される。放電の際には、負極がリチウム陽イオンを放出することにより電子の流れを生じる。リチウムイオンが電解液を通って正極に入ると、そこで酸素と反応して過酸化リチウム(Li2O2)が生成する。充電の場合は逆の化学反応が起こる。

しかし、多孔質カーボンを用いる従来の正極は、この反応中に壊れてしまうことが多く、その際に炭素と反応して生成する副生成物のリチウム化合物のせいで電池の効率が低下してしまう。多孔質カーボンの代わりにグラフェンという原子1個分の厚さの炭素層でできた正極を使うと、安定性と伝導性は向上するが、4.5 V以上の高い充電電圧が必要になる。そこで、酸化ルテニウム(RuO2)ナノ粒子などの触媒を用いると、放電時に正極に蓄えられたLi2O2が充電時に効率よく分解されるので充電電圧を下げることが可能になったが、数回の充電サイクルの後、RuO2ナノ粒子が凝集して不活性な塊を形成してしまうという問題は依然として解決されなかった。

今回、AIMR の陳明偉(Mingwei Chen)教授および郭現偉(Xianwei Guo)助手らは、グラフェン層の間にRuO2ナノ粒子を挟むことによって、リチウム空気電池のエネルギー効率と寿命を劇的に向上させた1

研究チームは、正極用の鋳型として多孔質ニッケル骨格を作製した後、温度を800℃にして、窒素原子を含むピリジンという化学物質を加えた。ピリジンが分解されると鋳型の内部に付着し、窒素原子を含んだグラフェン(窒素ドープグラフェン)の膜が形成される。窒素ドープグラフェンに直径約3~5 nmのRuO2ナノ粒子を担持させた後、その上にもう1層窒素ドープグラフェンを形成。鋳型のニッケルを酸エッチングで除去すると、2枚のグラフェン層の間にRuO2ナノ粒子が挟まれた構造の多孔質正極が得られる(図参照)。リチウムイオンは、正極のこうした細孔の奥深くまで浸透し、グラフェン中の窒素サイト周辺で酸素と結合することがわかった。

この正極を用いたリチウム空気電池は、必要な平均充電電圧が3.7 Vと低く、100回以上の充放電サイクルを経ても大きなエネルギー容量を維持していた。研究チームは、RuO2ナノ粒子がグラフェンシート間に使用前とほぼ同様に封入されていることと、不要なリチウム副生成物がほとんど形成されないことを確認した。

研究者らは、卑金属などのより安価な材料を使って正極を改良したいと考えている。「安価な触媒を担持した低コスト正極を開発して、リチウム空気電池の効率をさらに高くし、寿命を延ばし、充電電圧を低くして、商業化に繋げる予定です」と郭助手は話す。

References

  1. Guo, X., Liu, P., Han, J., Ito, Y., Hirata, A., Fujita, T. & Chen, M. 3D nanoporous nitrogen-doped graphene with encapsulated RuO2 nanoparticles for Li–O2 batteries. Advanced Materials 27, 6137–6143 (2015). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。