電極触媒反応: 孔だらけの金が水素生成触媒の活性を高める

2015年02月23日

水素製造用の高活性触媒の新たな作製法として、ナノ多孔質金の表面にMoS2単層膜を成長させる手法が開発された

湾曲したナノ多孔質金基板(大きい金色の球)の表面にMoS2単層膜(緑色と黄色の球)を成長させた様子を表す概略図
湾曲したナノ多孔質金基板(大きい金色の球)の表面にMoS2単層膜(緑色と黄色の球)を成長させた様子を表す概略図

許可を得て参考文献1より改変 © 2014 Wiley

触媒存在下で水を電気分解することで製造できる水素は燃料電池車などに需要があり、グリーンイノベーションを可能にする次世代のエネルギー生産手段として注目を集めている。しかし、現行の電極触媒による水素製造法のほとんどが希少で高価な白金系触媒を利用するため、実用化への道は遠い。

白金系触媒に代わる電極触媒として有望視されている材料の1つが、地殻中に豊富に存在する安価な二硫化モリブデン(MoS2)である。これまでの研究から、水素生成反応に主に寄与するのはMoS2触媒のエッジ部に位置する硫黄原子であることが示唆されているため、多くの研究者はエッジ部の比率の高いMoS2触媒を作製することに注力してきた。しかし、構造的に不安定なエッジ部が多い触媒は、触媒自身の安定性と電気伝導性が低くなる場合が多い。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のMingwei Chen(陳明偉)教授が率いる日本と中国の共同研究グループは、エッジ部がほとんど存在しないMoS2連続膜で高触媒活性を実現させるという、全く異なるアプローチからMoS2触媒を改良することに成功した1。今回開発された手法は、広い有効表面積と高い触媒活性をあわせ持つ2次元触媒の新たな作製法に繋がる可能性があるため、従来の手法に比べて非常に幅広い応用が期待される。

研究チームは、直径約100ナノメートルの微小な細孔を持つナノ多孔質金を基板にして、その外側の湾曲した表面にMoS2単層膜を成長させるという戦略をとった(図参照)。このMoS2単層膜の水素生成触媒としての性能を測定したところ、エッジ部がほとんどないにもかかわらず、これまでに報告されている最高のMoS2系触媒に匹敵する触媒性能が得られた。

この高触媒活性の原因を探るため、研究チームは理論計算を行った。計算結果は、MoS2単層膜が金基板表面の湾曲を受け継ぐことで、その化学的特性が変化することを示唆していた。研究チームは、湾曲に伴う面外方向への格子ひずみがMoS2膜の高触媒活性を生じさせたと考えている。

理論計算は、ひずみが2次元触媒の触媒特性に及ぼす影響に関する新しい知見を提供するだけでなく、2次元触媒の格子ひずみを制御することによって触媒活性を調節できる可能性も示しているため、研究チームはこの新たな「エッジフリー」触媒に大きな期待を寄せている。

「この手法を利用すれば、2次元膜の高い比表面積を維持したままで、2次元材料から3次元構造を持つデバイスを製作することができます」とChen教授は言う。

研究者らは現在、実際の応用を視野に入れて、金の代わりにニッケルやグラフェンといった安価な基板を使用する方法を検討している。

References

  1. Tan, Y. W., Liu, P., Chen, L. Y., Cong, W. T., Ito, Y., Han, J. H., Guo, X. W., Tang, Z., Fujita, T., Hirata, A. & Chen, M. W. Monolayer MoS2 films supported by 3D nanoporous metals for high-efficiency electrocatalytic hydrogen production. Advanced Materials 26, 8023-8028 (2014). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。