電気化学: 2次電池の電極特性を画像化する

2015年01月26日

強力な顕微鏡技術によって、2次電池の正極材料表面における反応の不均一性が明らかになった

電気化学セル顕微鏡を用いて画像化した2次電池の電極中のリン酸鉄リチウム(LiFePO4)粒子の形状(左図)および電流(右図、赤色部分は最大電流143ピコアンペアに対応する)。
電気化学セル顕微鏡を用いて画像化した2次電池の電極中のリン酸鉄リチウム(LiFePO4)粒子の形状(左図)および電流(右図、赤色部分は最大電流143ピコアンペアに対応する)。

参考文献1より複製。 © Y. Takahashi et al.

リチウムイオン2次電池はモバイル機器の電力として広く利用されているが、その動作に関しては多くの不明な点が残されている。特に、電池材料表面での反応の不均一性に関しては、これまで測定する適切な解析技術がなく、調べることが困難だった。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の末永智一教授、高橋康史助教、熊谷明哉助教らは、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)電極の電気化学的特性を可視化できるナノ電気化学セル顕微鏡を開発した1。「電極表面の反応性の可視化に世界で初めて成功したのです」と高橋助教は言う。今回の成果により、リチウムイオンの挿入・脱離に伴う電流を高い空間・時間分解能で評価できるようになるため、反応の不均一性を理解することで、より高性能のリチウムイオン2次電池の設計が可能になるだろう。

今回開発されたナノ電気化学セル顕微鏡には、開口直径が約50ナノメートルのピペットプローブが用いられている。このピペットプローブにリチウムイオン溶液を充填し、その先端で電極表面を走査する。ナノピペット内の溶液が電極に触れるたびに、ピペットと電極の間に容量電流が生じる。この容量電流をフィードバックシグナルに利用し、ピペットが試料に接触した後、リチウムの挿入脱離に伴う酸化・還元電流を計測する。研究チームはこの仕組みを利用して、約100ナノメートルのスケールで電極の形状を画像化したほか、各測定点での局所的な電気的特性も調べることができた。

新しい顕微鏡の試験は、LiFePO4とアセチレンブラックを含有する典型的な合剤電極上で行われた。LiFePO4は安価で環境に優しい活物質だが、電気伝導度が低い。電子伝導度の低さを補うためにアセチレンブラックを添加するが、アセチレンブラック自身はリチウムイオンの挿入・脱離に伴う電流を得ることはできないため、電池の総エネルギー容量を低下させる。

この電極をナノ電気化学セル顕微鏡で調べたところ、電極に埋め込まれているマイクロメートルサイズのLiFePO4粒子上では、リチウムイオンの挿入・脱離に起因した酸化還元電流が観察されるが、アセチレンブラックからなる領域では酸化還元電流がほとんど観察されなかった。隣接する粒子の影響を受けずに個々の粒子に狙いを定めることができる(図参照)。

研究チームは、局所的に充放電を行いながらピペットプローブを走査することで、充放電に伴う電位の変化を計測した。また、この過程で得られた各点での電位を、全点計測後にイメージとして再構成することで、個々のLiFePO4粒子の電位変化を10ミリ秒間隔で可視化することもできた。

研究者らはさらに、個々のLiFePO4ナノ粒子について、結晶構造や粒子の配向がリチウムイオンの動き方に及ぼす影響を評価した。研究チームは現在、これらの特性に関してさらに実験を進めており、その知見が、電極構造の最適化に利用され、2次電池の性能を向上させるのに役立つことが期待される。

References

  1. Takahashi, Y., Kumatani, A., Munakata, H., Inomata, H., Ito, K., Ino, K., Shiku, H., Unwin, P. R., Korchev, Y. E., Kanamura, K. & Matsue, T. Nanoscale visualization of redox activity at lithium-ion battery cathodes. Nature Communications 5, 5450 (2014). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。