ポリマー: ナノサイズの針で重要な手掛かりを得る

2014年11月21日

高分解能「ナノメカニカル」プローブを使うことによって、多層ポリマーデバイスの層同士の接着状態をマッピングすることができる

新しいAFMイメージング法は、ポリマー界面(緑色の領域)が時間と共に広がって拡散していく様子を明らかにすることができる。こうした情報は、プラスチック太陽電池などのデバイスの寿命を延ばすのに役立つかもしれない。
新しいAFMイメージング法は、ポリマー界面(緑色の領域)が時間と共に広がって拡散していく様子を明らかにすることができる。こうした情報は、プラスチック太陽電池などのデバイスの寿命を延ばすのに役立つかもしれない。

許可を得て参考文献1より転載。© 2014 American Chemical Society

ポリマー界面における混合状態のわずかな変化は、太陽電池などのデバイスや膜の性能に大きな影響を及ぼす可能性がある。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のDong Wang助教らは、定量的ナノメカニカルマッピング(QNM)という革新的な技術を用いて、ポリマー界面の微細構造の情報と力学的な情報を同時に取得することに成功した1。これらの情報により、接着に関する問題を今よりも容易に解決できるようになるかもしれない。

ポリマー系デバイスを加工処理した後に、異なる層同士が拡散して絡み合う様子を定量化することは、デバイス開発にとって基本的課題のひとつとなっている。各層の高分子鎖が互いの領域に入り込む相互貫入現象を研究するため、これまで多くの解析手法が開発されてきたが、その成果は各成分の濃度勾配に関する情報を得るだけにとどまっていた。ポリマーの応用と密接に関係しているのは界面の力学的な特性だが、これを小スケールで測定するのは難しいからである。

ポリマー界面の独特な物理的挙動を詳細に解き明かすため、Wang助教らは原子間力顕微鏡(AFM)がもつ可能性に目を向けた。通常の測定では、AFMプローブを共振状態で走査表面に「タップ」することで、走査表面の詳細な3次元プロファイルを取得する。これらのタッピング信号で、ポリマーとプローブの間の機械的な力を測定することもできる。しかし、このようなAFMフォースモードはデータ取得速度が遅い上、測定した機械的な力を材料の特性に変換するための複雑な解析的手法が必要になる。

今回新たに開発されたQNMイメージングモードは、プローブタップ中に表面にかけた力の最大値を検出することによって、力学的測定の劇的な高速化と単純化を可能にした。この「ピークフォース」信号をフィードバック制御ループに用いることで、タッピング信号でサンプルを無損傷かつ高速に走査し、物理的な力の異なる領域をナノスケールの精度でマッピングできるようになった。

研究者たちはQNMを用いて拡散効果を調べるため、ポリ塩化ビニルとポリ-n-ブチルメタクリレートという、完全に混ざり合う性質を持つ2種類のプラスチックの間に形成される界面を観察した。その結果、得られたナノメカニカルマップから、ポリマー成分の剛性の明確な特徴と、界面のはっきりした増大が明らかになった(図参照)。研究チームは、この界面層が時間と共にどのように広がっていくかとこの層がどのような機械的変形をしていくのかを追跡し、界面における拡散の速度論的挙動、微細構造、ガラス転移温度などの新しい物理学的・化学的データを10ナノメートルの分解能で得ることができた。

「今回の手法のポイントは、高分解能AFMを用いて、材料の力学的特性のわずかな違いを非常に短い長さスケールで評価できることです。これが可能になったことにより、ポリマー層間の接着状態を調べる新しい手段が手に入りました」とWang助教は言う。

References

  1. Wang, D., Liang, X., Russell, T. P. & Nakajima, K. Visualization and quantification of the chemical and physical properties at a diffusion-induced interface using AFM nanomechanical mapping. Macromolecules 47, 3761–3765 (2014). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。