グラフェン: 3次元ナノ細孔で触媒反応を成功させる

2014年10月27日

窒素をドープした3次元ナノ多孔質グラフェンが、白金などの高価な金属触媒を必要としない燃料電池やリチウム-空気電池を可能にするかもしれない

3次元グラフェン構造体の微小なナノ細孔は、触媒反応サイトとしてグリーンエネルギー技術を支えることになるかもしれない。
3次元グラフェン構造体の微小なナノ細孔は、触媒反応サイトとしてグリーンエネルギー技術を支えることになるかもしれない。

参考文献より図3を改変。© 2014 Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.

燃料電池やリチウム-空気電池には、酸素から電気を作り出すための触媒として白金系電極が用いられることが多いが、貴金属を含むこれらの材料は高価であるため、材料科学研究者はこれに代わる安価な触媒の開発に取り組んでいる。なかでも注目されているのがグラフェンである。グラフェンは炭素原子からなる2次元シート構造をもち、原子1個分の厚さしかなく、金属のような特性をもっている。しかし、グラフェンの化学反応性の低さが、この材料を触媒として利用するための研究が進まない原因となっている。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の伊藤良一助教およびMingwei Chen(陳明偉)教授らは、「共連続」構造をもつナノ多孔質ニッケル鋳型を用いて平坦なグラフェンシートを3次元構造体へと変化させ、有望な触媒活性を引き出すことに成功した1。ナノ多孔質ニッケル鋳型は、滑らかな表面にナノスケールの穴(ナノ細孔)を無数に開けた金属スポンジのような材料である。ベンゼンガスを用いた化学気相蒸着法によりニッケル鋳型全体にグラフェンの膜を成長させた後、酸処理をして鋳型を除去すると、平坦なグラフェンとさほど違わない、驚くほど高い電気伝導性を持つ3次元グラフェンが得られる。

研究チームは、3次元グラフェンの細孔サイズの小ささと電気伝導性の高さとの間に関連があることを明らかにしたほか、平坦なグラフェンが3次元ナノ細孔を構成するために必要な幾何学的欠陥の蓄積が重要な役割を果たしていることにも気付いた。そして、これらの欠陥サイトは化学的に活性であることから、触媒反応サイトとしても機能するかもしれないと推測した。

研究者らは、3次元グラフェンを燃料電池やリチウム-空気電池の反応の一つである「酸素還元反応」の触媒として使用するためには、外部から窒素ドーパント原子を導入する必要があると考え、ベンゼンガスをピリジンガス(窒素原子を1個、炭素原子を5個持つ、ベンゼンに似た分子)に切り替えて、共連続ニッケル鋳型に蒸着した。

詳細な分析の結果、新たに得られた窒素ドープグラフェンも、明確なナノ細孔をもつ整然とした3次元構造をとることがわかった(図参照)。この材料を酸素飽和電解質溶液に浸けたところ、優れた酸素還元能力を示すことが明らかになった。なかでも、細孔サイズを可能なかぎり小さくしたものは特に好ましい挙動を示した。

「細孔サイズが小さくなるほど、曲率の大きい構造をとらなければならないため、多くの幾何学的欠陥が必要になります」と伊藤助教は説明する。「また、細孔サイズが最も小さいサンプルはピリジン型窒素原子の濃度が最も高く、これらの窒素ドーパント原子が各種の幾何学的欠陥の形成を補助していると考えられます。それによって、ナノ多孔質窒素ドープグラフェンの触媒活性が著しく高まります」。

バッテリーや燃料電池では、酸素還元反応だけでなく水素発生反応にも触媒が重要な役割を果たしている。研究チームは現在、この水素発生反応に対する触媒活性を付与することを目指し、3次元ナノ構造をもつグラフェンの触媒能力をさらに高める方法を研究している。

References

  1. Ito, Y., Qiu, H.-J., Fujita, T., Tanabe, Y., Tanigaki, K. & Chen, M. Bicontinuous nanoporous N-doped graphene for the oxygen reduction reaction. Advanced Materials 26, 4145–4150 (2014). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。