有機エレクトロニクス: 曲がっているところが肝心

2013年08月26日

曲げ効果を示す小分子が、ほかのオプトエレクトロニクス技術を凌駕するフレキシブル発光トランジスタを実現させるかもしれない

「曲がった」固体結晶を形成する新しい芳香族化合物が合成された。この化合物を利用すれば、高輝度ルミネッセンス光を放出する高速有機トランジスタを作製できる。
「曲がった」固体結晶を形成する新しい芳香族化合物が合成された。この化合物を利用すれば、高輝度ルミネッセンス光を放出する高速有機トランジスタを作製できる。

© 2013 Tienan Jin

有機発光電界効果トランジスタ(OLET)は、高輝度発光と高速電子スイッチングを兼ね備えた革新的なデバイスである。フレキシブル低コストディスプレイや全有機レーザーへの応用が期待されているが、その開発は、材料に起因する根本的課題によって阻まれてきた。つまり、トランジスタの主要パラメーターであり、電荷キャリア移動度を高める分子相互作用が、発光を抑制してしまうという問題が頻繁に起こるのである。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のTienan Jin准教授、池田進准教授、田村宏之助教、谷垣勝己教授らの学際的研究チームは、共同で実験研究1と理論研究2を行った結果、結晶中で異常な屈曲構造をとる短鎖状の酸素化芳香族分子を用いると、OLETの電子移動度を維持したまま発光効率を高められることを発見した。

この研究チームは過去に、フェニル環とチオフェン(イオウ原子を含む五角形芳香族分子)を結合させて短い鎖状分子(オリゴマー)を形成することによって、BP2Tという有望な有機半導体を合成している。しかし、BP2Tは優れたバイポーラ増幅特性を持っていたにもかかわらず、入射光子の38%しかルミネッセンス発光に変換することができなかった。この量子収率では低すぎて、OLETに用いることはできない。

研究チームは、チオフェンのイオウ原子を酸素原子で置換してフラン環にすれば、BP2Tの性能が向上するかもしれないと考えた。酸素原子はイオウ原子よりも小さいので、この置換は、より密に充填した結晶(つまり、電荷の高速移動に最適な結晶)を成長させるのに好都合である。さらに、「オリゴマー化したフランがルミネッセンス材料を光らせることは、よく知られていたため、私たちはこの仮説が正しいという自信がありました」と、Jin准教授は説明する。

研究者らが新しい含フラン化合物BPFTを合成してOLETに導入したところ(図参照)、ルミネッセンス量子収率は51%に跳ね上がり、この手法が効果的であることがわかった。次に、X線結晶解析法でBPFTの分子構造を詳しく調べたところ、ほとんどの芳香族分子が平坦なフラット配向で充填されるのに対して、フランオリゴマーは明らかに曲がった構造をとっており、固体状態ではフラット配向と折れ曲がったベント配向が交互に現れていることが確認できた。

理論的シミュレーションから、OLETのフォトルミネッセンスが格段に強くなったのは、BPFTが曲がっているためであることが明らかになった。田村助教によると、この充填配列が芳香族固体に固有の平衡を「破り」、光励起状態に遷移する際に非対称電子双極子を形成させる。そして、この電子双極子が、全対称錯体では禁じられているルミネッセンス発光を発生させているという。

高性能OLETの発見は、有機半導体の合成、デバイスの作製、モデリングなど多岐にわたる分野の専門知識が必要になるため非常に難しく、めったにあることではない。BPFT構造を特定し、調整するためには、異なる研究グループ間での共同研究が極めて重要であることがわかった、と研究者らは言う。そして、「共同研究チームの中で長い時間をかけて議論し、完璧な融合研究を行うことができなかったら、これだけの成果は得られなかったでしょう」とJin准教授は付け加えた。

References

  1. Oniwa, K., Kanagasekaran, T., Jin, T., Akhtaruzzaman, Md., Yamamoto, Y., Tamura, H., Hamada, I., Shimotani, H., Asao, N., Ikeda, S. & Tanigaki, K. Single crystal biphenyl end-capped furan-incorporated oligomers: influence of unusual packing structure on carrier mobility and luminescence. Journal of Materials Chemistry C 1, 4163–4170 (2013). | article

  2. Tamura, H., Hamada, I., Shang, H., Oniwa, K., Akhtaruzzaman, Md., Jin, T., Asao, N., Yamamoto, Y., Kanagasekaran, T., Shimotani, H. et al. Theoretical analysis on the optoelectronic properties of single crystals of thiophene-furan-phenylene co-oligomers: efficient photoluminescence due to molecular bending. The Journal of Physical Chemistry C 117, 8072–8078 (2013). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。