スーパーキャパシタ: わずかな金の添加で電気伝導性が向上

2013年04月26日

革新的な膜形成手法により、次世代高速エネルギー貯蔵材料の開発が加速するかもしれない

金原子(黄色の球)をドープした酸化マンガン(MnO2:青色と赤色の球)の結晶構造。新しい知見によって、この種の材料がスーパーキャパシタに非常に適していることが明らかになった。
金原子(黄色の球)をドープした酸化マンガン(MnO2:青色と赤色の球)の結晶構造。新しい知見によって、この種の材料がスーパーキャパシタに非常に適していることが明らかになった。

© 2013 Mingwei Chen

 

スーパーキャパシタ(電気二重層キャパシタ)は、大容量エネルギー貯蔵と短時間での充電が可能であるため、バッテリーを凌駕する蓄電材料になると期待されている。低コストで毒性がなく、かつキャパシタンスが非常に大きい酸化マンガン(MnO2)は、スーパーキャパシタの電極用材料として有望視されている。しかし、MnO2は電気伝導性が低いため、電子輸送が困難なのが欠点である。これまでのところ、望ましいスーパーキャパシタンスを示したのは、膜厚がナノメートルサイズのMnO2膜とMnO2ナノ粒子の低密度分散系だけであり、こうした構造体は小さすぎて、ほとんどの用途で十分な電力を供給することができない。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のMingwei Chen(陳明偉)教授、Jianli Kang助手および共同研究者らは、MnO2の結晶格子内に金原子を取り込ませた新しいタイプのナノ多孔性電極を作製することによって、MnO2厚膜の電気伝導度を高める手法を開発した1。研究チームはまず、金-ポリマー基板上に、針が並んだような構造のナノスケールMnO2膜を電気化学的に析出させて、多孔性MnO2電極を形成した。しかし、こうして作製した電極にはエネルギー貯蔵用の表面サイトが数多く存在しているにもかかわらず、MnO2の電気伝導度が低いため、膜厚が350ナノメートルを超えるとキャパシタンスが劇的に減少してしまう。

この問題を解決するため、研究者らはスパッタリングという物理蒸着プロセスを用いて、MnO2電極に金原子を蒸着させた。MnO2の電気化学的析出と、このような金の「ドーピング(添加)」を交互に数回繰り返すことにより、スーパーキャパシタとして使用可能なマイクロメートル厚の電極を作製することができた。X線解析と電子顕微鏡解析を行ったところ、この手法で10%のMnO2が電子豊富な金ドーパント原子に置き換わり、金原子がMnO2の全体に均一に分散していることが明らかになった(図参照)。「MnO2と金原子を交互に重ねた結果、金ドーパントを酸化物格子に物理的に吸着させるだけでなく、格子の内部にしっかり入り込ませることができました」とChen教授は説明する。「スパッタリングされた金が電極/電解質界面まで移動してMnO2格子サイトを占めるようにするためには、電気化学的析出法が有効なのです」。

金を添加したMnO2は、純粋なMnO2膜よりキャパシタンスが65%も高いことがわかった。これは、厚いMnO2電極で実現されたものとしては、現時点で最高の電荷貯蔵容量である。また、この新材料は数時間使用した後にも優れた安定性を示し、電荷容量はむしろ増大した。これは、ボルタンメトリーサイクル中に金ドーパントの電気化学的再分布が起こった結果である。さらに、AIMRの赤木和人准教授らとの共同研究で、これらの知見の背景にある基本原理も理論的に解明された。すなわち、金ドーパントがマンガン原子と酸素原子に等しく電子を渡すため、材料全体の電気伝導性が向上することが確認されたのである。

「酸化マンガンは、電気化学スーパーキャパシタ用の材料として最も有望です。そしてドーピングは、電気伝導性を高める最も簡単で最良の方法です」とChen教授は話す。このアイデアはこれまでもしばしば検討されてきたが、実行に移されることはほとんどなかった。研究チームは将来、MnO2厚膜デバイスが製品化される際にはこのようなドーピング法が役立つはずだと確信している。 

References

  1. Kang, J., Hirata, A., Kang, L., Zhang, X., Hou, Y., Chen, L., Li, C., Fujita, T., Akagi, K. & Chen, M. Enhanced supercapacitor performance of MnO2 by atomic doping. Angewandte Chemie International Edition 52, 16641667 (2013). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。