触媒反応: ナノ多孔質金で水素化還元する

2013年02月25日

炭素-炭素三重結合から二重結合への選択的還元反応に、多孔質金触媒が有用であることが明らかになった

アルキンは、有機シラン、水、アミンの存在下にて、ナノ多孔質金表面上で効率よくアルケンに還元される。
 
アルキンは、有機シラン、水、アミンの存在下にて、ナノ多孔質金表面上で効率よくアルケンに還元される。
 

© 2012 Tienan Jin

ナノ多孔質金触媒は寿命が長く環境に優しいため、グリーンの観点から大いに注目されている。反応溶液中に溶解させて用いる均一系触媒とは違い、固体状態で分散させて用いる不均一系触媒なので、取り扱いも容易である。このような特性をもつナノ多孔質金触媒は、アルコール基(炭素-酸素単結合をもつC–OH部からなる基)からカルボニル基(炭素-酸素二重結合をもつC=O部からなる基)への変換などの高選択的酸化反応を効率よく進めることが知られているが、水素化還元反応に対しては、最近まで不活性であると考えられていた。

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のTienan Jin准教授らは、このたび、国内および中国の研究者らと共同で、アルキンからアルケンへの選択的水素化反応(炭素-炭素三重結合を二重結合に還元する反応)にナノ多孔質金触媒を利用できることを見いだした(図参照)1。興味深いことに、この反応は化学選択的かつ「Z-選択的」である。つまり、炭素―炭素単結合まで還元が進行せずに、炭素―炭素二重結合で還元を止めることができるだけでなく、アルキン部に付加した2個の水素原子が常に結合の同じ側にきて、「Z-アルケン」と呼ばれる活性の高いアルケンの異性体を生成することができるのだ。「これほど完全なZ-選択性と化学的選択性は、均一系触媒でも不均一系触媒でも今まで実現されていませんでした」とJin准教授は言う。

パラジウムや白金の均一系触媒を不均一ナノ多孔質金触媒に置き換えると、目的のアルケンをより高い収率で得ることができる。「不均一系触媒には、均一系触媒よりも丈夫で寿命も長いという長所もあります」とJin准教授は説明する。「そのうえ、ろ過により容易に回収できるため、何度か再利用することも可能になります」。

研究チームは、ナノ多孔質金触媒を作製するため、3次元的に湾曲したナノ細孔を持つ金-銀薄膜を電気化学的に脱合金化した。重水素標識した化学種を用いて対照実験を行ったところ、この反応の水素源である有機シランと水が、それぞれ1個ずつ水素を提供していることが明らかになった。また、水素分子の生成を防ぐために、ピリジンなどの適当なアミンを添加する必要があることもわかった。

その後、研究チームはナノ多孔質金触媒を用いて、分子の末端や内部に三重結合を持つ多くのアルキンの反応を調べた。その結果、すべてをアルケンまで完全に選択的水素化できるうえ、ほとんどすべての収率が90%を超えていた。

「ナノ多孔質金は、複雑な構造をもつさまざまな官能基の選択的還元に使えるばかりでなく、新しい不均一系触媒としてクリーンな化学合成を達成することに役立つだろう、と私たちは期待しています」とJin准教授は話す。「すでに予備実験では、今回の触媒系を複素環芳香族化合物やカルボニル化合物の選択的水素化に応用することに成功しています」。

References

  1. Yan, M., Jin, T., Ishikawa, Y., Minato, T., Fujita, T., Chen, L.-Y., Bao, M., Asao, N., Chen, M-W. & Yamamoto, Y. Nanoporous gold catalyst for highly selective semihydrogenation of alkynes: remarkable effect of amine additives. Journal of the American Chemical Society 134, 17536–17542 (2012). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。