高配向性マクロチャネルを備えた超軽量かつ強靭なハニカム炭素材料を開発

2026年01月22日

国立大学法人東北大学

配向性マクロチャネルを備えた超軽量かつ強靭なハニカム炭素材料を開発

―環境・エネルギー技術を支える材料構造設計―

発表のポイント

  • 一方向凍結法によって高い配向性を持つマクロチャネルを備えたハニカム状の構造を持つ炭素材料が作製されました。
  • 従来の多孔炭素材料と比べ、軽量でありながら非常に強靭な圧縮強度(注1)を持ち、貫通したマクロチャネルによって高い流体透過性を示します。
  • 耐久性が高く、効率的な物質移動と界面利用を可能にする事から環境技術やエネルギー技術を支える実用材としての展開が期待されます。

概要

マクロチャネルを有する多孔材料は、電池や触媒、水処理など多分野で重要であり、とりわけ多孔炭素材料は高い安定性と電気・熱伝導性から有望です。しかし従来の材料は、高密度高重量、加工性・耐久性の低さ、流体輸送経路の制限といった課題を抱えていました。

東北大学多元物質科学研究所の中辻博貴助教、同材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の西原洋知教授らは、これらの課題を克服するため、低密度・高機械強度・優れた流体輸送経路を併せ持つ高い配向性のマクロチャネルを備えた一体型のハニカム型炭素材料の作製方法の開発に成功しました。

本研究では、氷結晶を鋳型とするアイステンプレート法の1技術である一方向凍結法とセルロースナノファイバー(CNF)(注2)の持つハニカム構造を強く誘導する性質を活用し、軽量かつ高強度で貫通マクロチャネルを有するハニカム炭素材料を作製しました。得られた材料は低密度にもかかわらず極めて高い機械強度と流体透過性を示し、水浄化や電熱による熱交換において従来材料を大きく上回る性能を発揮することを実証しました。本研究は、これらの応用のみならず電極など幅広い応用の可能性を秘め、環境技術やエネルギー技術を支える材料としての応用が期待されます。

本研究成果は、2026年1月2日(現地時間)付けで、科学誌 Material Horizons(電子版)に掲載されました。

詳細な説明

研究の背景

マクロチャネルを備えた多孔材料は、物質及び流体の効率的な輸送と固体と流体の相互作用のための豊富な界面を提供することから、電池、触媒、ろ過、ライフサイエンス分野にまで幅広く応用され重要な役割を果たしています。特に多孔炭素材料は、化学的に安定で電気や熱をよく通す優れた素材であることから特に魅力的な材料です。ですが一方で、多くの多孔炭素材料が以下の三つの課題を抱えています。第一に高密度であるため可搬性や環境適正に課題を持ち、第二に粉末や粒状で合成されるため加工性や耐久性が問題となり、第三に貫通した細孔の少なさが流体の効率的な輸送を妨げ利用効率の低下を招く可能性があります。これらの課題を解決する低密度、高機械強度、そして流体輸送に優れた経路を兼ね備えた新しい炭素材料を創製する手法が必要とされています。そこで、東北大学多元物質科学研究所の中辻博貴助教らは、高配向性のマイクロチャネルを備えたハニカム型の構造を持つ一体型の炭素材料を作製することで、これらの課題を解決できると考えて研究を進めました。

今回の取り組み

本研究では、水が凍る際にできる氷の結晶を鋳型として利用するアイステンプレート法の技術に着目しました。中でも、この方法では凍結の方向を揃える一方向凍結法を用いることで材料内部に貫通した細孔を形成できます。我々の研究室では植物由来のTEMPO酸化セルロースナノファイバー(CNF)は、その過程において貫通したハニカム構造の形成を促進する顕著な能力を有することを報告しています。

そこで、本研究ではその高い構造規定力を利用し、高い機械的強度が期待できるレゾール型フェノール樹脂(注3)及び炭素化収率と電気伝導性の向上が期待できるカーボンブラック(注4)といった高機能性の炭素材料の前駆体とCNF を複合化してハニカム構造を形成し、熱処理によってカーボン化することで、非常に軽量でありながら、強い力にも耐えられる一体構造のハニカム炭素材料の作製を試みました。

得られたハニカム炭素材料は、約 0.09 g cm-3 という低密度でありながら極めて優れた圧縮強度(約 3400 kPa)を示しました(図1上)。さらに、圧力損失(注5)を最小限に抑え、効率的な流体透過を可能にする貫通したマイクロチャネルを持つことも確認できました。この相乗的な特性によって、従来の多孔質炭素材料とは異なり、高効率に大容量の流体をハニカム炭素材料内で処理することができます。さらに、高い貫通性は閉塞したチャネルが少ないことも意味し、導電性であるハニカム炭素材料の表面を電極として有効に利用できることも示しています。

実用を示す例として、水浄化性能を評価した結果、高い流速(約 20,000 L m-2 h-1)条件下でモデルとなる色素分子であるローダミン B を 99% 以上除去できることを確認できました(図1下段左)。さらに、炭素材料の導電性を利用して、電熱 (図1上段右) の水との熱交換性能を評価したところ、流量 5 mL min-1 で 21.4% のエネルギー交換効率を示し、これは比較対象の市販の金属製のハニカムの約 4 倍に相当する性能を示しました。これらの結果は、炭素材料の構造を精密に設計・構築することによって材料性能を飛躍的に高められることを明確に示しています。

今後の展開

本研究で確立した材料設計は、水浄化や熱交換に限らず、さまざまな分野への応用が期待されます。たとえば、内部構造や表面の性質を調整することで、特定の化学物質だけを選択的に除去する高性能フィルターや、反応効率を高める化学プロセス用の担体材料として利用することも可能です。また、電気を流して効率よく加熱できる特性を活かせば、省エネルギー型の加熱・温調デバイスとして、産業や家庭でのエネルギー利用の高度化にも貢献できます。さらに、植物由来のセルロースを活用した製造プロセスである点は、資源循環や持続可能性の観点からも大きな意義があります。今後は、用途に応じた機能の追加やスケールアップを進めることで、環境技術やエネルギー技術を支える実用材料としての展開が期待できます。


図1. 高配向性マクロ孔を持つハニカム炭素材料の機能と応用

謝辞

本研究は、JST CREST(課題番号:JPMJCR24S6)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)(課題番号:JPNP20004)およびJST SPRING(課題番号:JPMJSP2114)の支援を受けて実施されました。各種材料をご提供いただいたDKS株式会社、DIC株式会社、東海カーボン株式会社に感謝申し上げます。

用語解説
注1. 圧縮強度
押しつぶす方向に外から力を受けた時にどれだけ変形や破壊に耐えられるかという性質。1kPaであれば1m2当たり1000Nの力に耐えられる。
注2. セルロースナノファイバー(CNF)
木材や植物に含まれるセルロースを数nmまでほぐした、非常に細い繊維材料。主成分は紙や木と同じセルロースなので、再生可能・環境にやさしいのが特徴。
注3. フェノール樹脂
フェノールとホルムアルデヒドから作られる熱硬化性樹脂で、加熱により硬化する。本研究では、残炭率の高い炭素化に適したタイプの樹脂を利用している。
注4. カーボンブラック
主に凝集した微細な炭素粒子からなり、導電性や炭素化時の強度を補強する。
注5. 圧力損失
流体が流れる途中で圧力が下がる現象のことで、これが低いほど流体がスムーズに透過することを表す。

論文情報

タイトル: Ultralight and mechanically robust carbon monoliths with aligned microchannels
著者: Minghao Liu, Masataka Inoue, Hirotaka Nakatsuji, Rui Tang, Zheng-Ze Pan and Hirotomo Nishihara
掲載誌: Material Horizons
DOI: 10.1039/d5mh01458a新しいタブで開きます

問い合わせ先

研究に関すること

東北大学多元物質科学研究所
助教 中辻 博貴(なかつじ ひろたか)(研究者プロフィール

Tel: 022-217-5627
E-mail: hirotaka.nakatsuji.d1@tohoku.ac.jp

報道に関すること

東北大学多元物質科学研究所 広報情報室

Tel: 022-217-5198
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