東北大学 藪研究室らの合同チームがCO2削減技術を競う懸賞型研究開発事業に入賞

2025年03月14日

国立大学法人東北大学
AZUL Energy 株式会社

東北大学 藪研究室らの合同チームがCO2削減技術を競う懸賞型研究開発事業に入賞

─ 研究成果を社会の課題解決につなげ、脱炭素への貢献を目指す ─

概要

国立大学法人東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)(所在地:宮城県仙台市、所長:折茂慎一、以下「東北大学」)の藪 浩研究室と、東北大学発ベンチャーである、AZUL Energy株式会社(所在地:宮城県仙台市、代表取締役社長:伊藤 晃寿、以下、「AZUL Energy」)の合同チームは、二酸化炭素排出削減技術を競う懸賞型研究開発事業「TOKYO PRIZE Carbon Reduction」に応募し、50を超える応募チームの中から入賞に選ばれました。藪研究室とAZUL Energyが開発した青色顔料を用いたAZUL触媒と、本触媒を用いたCO2の有効活用技術が評価されての入賞です。

最終発表会後に記念撮影。左が藪教授。

詳細な説明

「TOKYO PRIZE Carbon Reduction」は、東京都が運営するスタートアップ支援展開事業「TOKYO SUTEAM」の一環として開催された、二酸化炭素削減技術を競う国内最大規模の懸賞型研究開発事業です。

東北大学の藪研究室とAZUL Energyによる合同チームは、CO2の有効活用技術で応募し、3月12日に東京六本木で行われた最終発表会にて入賞に選ばれました。藪研究室とAZUL Energyが開発したAZUL触媒と本触媒を用いたCO2の有効活用技術が評価されての入賞です。

AZUL触媒について

東北大学藪研究室では、青色の顔料である金属アザフタロシアニンを炭素に分子状に担持したAZaphthalocyanine Unimolecular Layer (AZUL)触媒を開発し(参考文献1)、様々な電気化学反応の触媒として応用する研究開発を行ってきました。これまで燃料電池や金属空気電池の正極触媒として応用を行い、通常1.5 V程度の電圧である亜鉛空気電池の出力を、触媒とセル設計の組み合わせにより2.0 V以上に上げたり(参考文献2)、紙に触媒を塗布することで、水を吸って高効率に発電する金属空気紙電池の開発と、そのウェアラブルデバイスへの応用などを行ったりしてきました(参考文献3)。さらに近年では、水電解触媒(参考文献4)やキャパシタの容量向上(参考文献5)など、多様なエネルギーデバイスの性能向上にAZUL触媒が応用できることを報告してきました。

今回、特定の中心金属を持つ本触媒がCO2を還元する性能に着目した提案を行ったところ、CO2を回収し、有効利用する技術(CCU、Carbon Capture and Utilization)のキー材料として評価されました。

今後の展開

CO2削減のためにはCO2を回収するだけでなく、有益な炭化水素化合物等に変換するなどにより、有効活用することが必要不可欠です。これまでCO2を炭化水素化合物に変換するためには、多くのレアメタルが触媒として使用されており、その資源制約や価格が普及の足枷となっていました。

AZUL触媒は青色顔料と炭素を組み合わせた安価でサステイナブルな触媒であり、CCUにおいて従来の触媒に代わる重要な役割を果たすと期待されます。

参考文献

  • H. Abe, Y. Hirai, S. Ikeda, Y. Matsuo, T. Matsue, H. Matsuyama, J. Nakamura, H. Yabu, “Fe Azaphthalocyanine Unimolecular Layers (AzUL) on Carbon Nanotubes for Realizing Highly Active Oxygen Reduction Reaction (ORR) Catalytic Electrodes”, NPG Asia Materials, 11, 57 (2019).
  • K. Ishibashi, K. Ito, H. Yabu, “Rare-metal-free Zn-Air Batteries with Ultrahigh Voltage and High Power Density Achieved by Iron Azaphthalocyanine Unimolecular Layer (AZUL) Electrocatalysts and Acid/Alkaline Tandem Aqueous Electrolyte Cells”, APL Energy, 1, 016106 (2023).
  • K. Ishibashi, S. Ono, J. Kamei, K. Ito, H. Yabu, “Rare-Metal-Free High-Performance Water-Activated Paper Battery:A Disposable Energy Source for Wearable Sensing Devices”, RSC Applied Interfaces, 1(3), 435-442 (2024).
  • K. Ishibashi, T. Liu, Y. Ishizaki, S. Nagano, J. Yoshida, S. Ono, Y. Takahashi, A. Kumatani, H. Yabu, “Crystalline Formation Enhances Hydrogen Evolution Reaction Property of Copper Azaphthalocyanine on Carbon Electrodes”, ACS Applied Energy Materials, 7(22), 10466-10473 (2024).
  • K. Ishibashi, Y. Hirai, K. Oku, K. Ito, H. Yabu, “A Molecular Adsorption Concept for Increasing Energy Density of Hybrid Supercapacitors”, ACS Applied Materials and Interfaces, 16(26), 34393–34401 (2024).

問い合わせ先

研究に関すること

東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
教授 藪 浩(やぶ ひろし)(研究者プロフィール

Tel: 022-217-5996
E-mail: hiroshi.yabu.d5@tohoku.ac.jp

報道に関すること

東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR) 広報戦略室

Tel: 022-217-6146
E-mail: aimr-outreach@grp.tohoku.ac.jp