ERATO磯部プロジェクト実験施設 グッドデザイン賞受賞
「JST ERATO磯部縮退π集積プロジェクト」実験施設
2014年度グッドデザイン賞受賞(設計:建築築事務所)
Photograph©Takumi Ota
写真 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)内の磯部縮退π集積プロジェクト(居室照明)
発表概要
建築築事務所の設計によるJST ERATO磯部縮退π集積プロジェクト(所在地:国立大学法人東北大学)の実験施設が、2014年度グッドデザイン賞を受賞しました。
発表内容
建築築事務所の設計によるJST ERATO磯部縮退π集積プロジェクト(所在地:国立大学法人東北大学)の実験施設が、2014年度グッドデザイン賞を受賞しました。受賞対象は、片平キャンパスにあるAIMR本館内の5階実験室と3階居室となります。化学分野で修士号を取得後、東京藝術大学で建築を学んだ建築家(望月)が、自らの経験を基に、共同設計者(市川)とともに理想的な環境を備えた実験施設を設計したものです。異分野研究者が参画するERATOプロジェクトに相応しい「分野融合」を念頭に、機能性を損なうことなく「美しさ」を追求した設計となっています。
設計についての詳細
[背景]実験施設はそこに置かれる実験設備の不確定な重荷に耐える為にコンクリートの強固な土間を要し、さらに実験科学施設としての利便性を鑑みると実験設備への配線や配管を床からでなく天井からとることとなる。多くの実験施設は、研究者が長時間の作業をする施設であるにも関わらず、場当たり的に置かれた複雑な機器の配置に、天井からの配線や配管が整理できず、快適な環境とは言えない状況にあることに問題を感じたことから設計が始まった。
[企画・開発の意義]研究者が長時間過ごす実験施設のリノベーションは、研究者の社会において未だ手付かずの領域である。今回のリノベーションによって社会に対して新たに提案・提供しようとした価値は、複雑で高度な実験施設も、建築家によって丁寧に整理さえすれば作業環境が良くなるだけでなく、研究者以外の人が来ても美しいと思える環境がつくれるのだということを知って、体感してもらうことにある。
[創意工夫]実験施設には、実験する実験室とデスクワークする居室がある。実験室では、実験機器の徹底的な調査と理解を計り、既存建築に設置された配線ラックや配管経路に合わせ、その実験機器を廊下から見た際にすべてが一望できるよう細やかに配慮した配置を工夫した。さらに、縦横無尽に駆け巡る配線ラックを照明に見立てる事により、天井を抽象的な光の面に見立て、広い研究室のすべての場所で均質な照度を確保すると共に、各機器に付属するオペレーション用の機器の棚を配線ダクトに見立て、電源を天井から床に落とす仕組みをつくった。居室では、元々3つの小部屋だった壁を取り払い、16人の研究者全員の活動が見渡せるような場所にした。大きな机が5つ、その上に2つの半透明な机が乗る、机というモチーフで空間を整理した。エキスパンドメタルで製作された2つの机は、配線のためだけでなく、照明空調換気の設備機器が押込められた、いわば設備のための机となっている。いずれの環境でも異分野からの研究者が一体感をもって研究遂行可能となるよう、文字通り「壁」を廃した設計が心がけられている。
発表者の氏名・所属:
磯部 寛之 | JST ERATO磯部縮退π集積プロジェクト 研究総括 東北大学原子分子材料科学高等研究機構 主任研究者 東北大学大学院理学研究科 教授 |
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望月 公紀 | 建築築事務所 |
市川 竜吾 | 建築築事務所 |
用語解説
グッドデザイン賞
「グッドデザイン賞」は、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する、総合的なデザインの推奨制度です。その母体となったのは、1957年に通商産業省(現経済産業省)によって創設された「グッドデザイン商品選定制度(通称Gマーク制度)」であり、以来50年以上にわたって、私たちの暮らしと産業、そして社会全体を豊かにする「よいデザイン」を顕彰し続けています。詳細はグッドデザイン賞公式webサイトをご覧ください。また受賞内容の詳細はこちらをご覧ください。
参考図版
*写真はhttp://archichi.jp/あるいはhttp://www.jst.go.jp/erato/isobe/でも,ご覧頂けます
All Photographs©Takumi Ota
図1 磯部縮退π集積プロジェクト居室 全景。配線,照明,机を一体設計した空間設計となっている。
分野の異なる研究者が気軽に議論できるように配慮がなされている。
図2 磯部縮退π集積プロジェクト居室 デスク上情報コンセント部詳細。
天井からの配線がエキスパンドメタル内に格納されている。
図3 磯部縮退π集積プロジェクト居室 天井詳細。配線と間接照明に配慮がなされている。
エキスパンドメタル上部の天井部分は銀色塗装され、反射光によるおだやかな作業環境をつくりだす。
図4 磯部縮退π集積プロジェクト居室 入り口概観。
図5 磯部縮退π集積プロジェクト居室 デスク・棚。
窓枠の高さを基準として空間を上下に分けた区分が施され、広がりのある空間が設計されている。
図6 磯部縮退π集積プロジェクト居室 流し台・棚。
図7 磯部縮退π集積プロジェクト実験室。
有機合成実験室、材料科学実験室、測定室(×2)がガラス壁により仕切られ、
異分野研究者が一体感のある同じ空間で研究を行っている雰囲気が醸し出される。
図8 磯部縮退π集積プロジェクト実験室。
天井からの配管・配線はメタルカバーで覆われ、
パネルを付した散乱光照明により室内がくまなく明るく照らされる。
図9 磯部縮退π集積プロジェクト実験室。材料科学実験室。
図10 磯部縮退π集積プロジェクト実験室。有機合成実験室。
図11 磯部縮退π集積プロジェクト実験室。有機合成実験台。
図12 磯部縮退π集積プロジェクト実験室。装置用の棚や流し台も統一したデザインとなっている。
棚はひとつひとつの機器の特性、使用方法を踏まえた機能性が設計されている。
図13 机、配線、照明の一体設計詳細。
問い合わせ先
磯部 寛之
東北大学大学院理学研究科 化学専攻 教授
TEL : | 022-795-6585 |
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E-MAIL : | isobe@m.tohoku.ac.jp |
Lab HP : | http://www.orgchem2.chem.tohoku.ac.jp/ http://www.jst.go.jp/erato/isobe/ |
望月公紀・市川竜吾(建築家)
建築築事務所
TEL : | 03-5315-4485 |
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FAX : | 03-5315-4485 |
E-MAIL : | info@archichi.jp |
HP : | http://archichi.jp/ |
報道担当
東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)
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住所 : | 〒980-8577 宮城県仙台市青葉区片平2-1-1 |
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TEL : | 022-217-6146 |
E-MAIL : | outreach@wpi-aimr.tohoku.ac.jp |