二重周期織り込み構造: 織り込み構造の新たなトポロジー分類

2025年03月24日

交差行列を用いた周期構造研究の新アプローチ

本研究を主導したMahmoudi助教

二つの独立した方向に対して周期性を持ったパターンで織り上げられた『二重周期織り込み構造』は、構造はわかっているものの、その仕組みは数学的に解明されていない。もともとこの構造は、織物やポリマーの織り込み構造のような実世界の構造をモデル化するために考案されたものだが、数学者たちはこの理論を一般化して、実用的な織物だけでなく、任意の数の異なる方向性を持つ織り込み構造も含めた、より広範な位相幾何学的枠組みにまで拡張しようと試みている。

しかし、周期的な織り込み構造を分類するのに適した、数学的に一貫性のある不変量がないことが一つの大きな障害となっている。従来の結び目不変量は、特に異なる織り込み構造を区別したり、解析のための最小単位を定義したりするなどの、繰り返しパターンの複雑さをうまく記述できなかった。

AIMRのSonia Mahmoudi助教らの研究チームは、2023年の論文で、交差数の概念を周期構造に適応させた交差行列を導入するというアプローチで、この課題に挑戦した1。交差行列を用いることで、ねじれのない二重周期織り込み構造をトポロジカルに分類することが可能になり、二重周期だけでなく三重周期にも適用できることを証明し、これまでのアプローチのギャップを埋めた。

「交差行列を使うことで、周期的な織物における交差の配置を系統的に符号化し、その最小単位セル内での交差数を計算することができました。これは、周期的な織り込み構造をトポロジカルに分析・分類するための、信頼性の高い組合せ論的手法といえます」とMahmoudi助教は説明する。

研究チームは、織物の交差数の合計を正確に計算し、行列の行と列の巡回置換によって織り込み構造の同値類を確立することで、これを実証した。

今回の成果は数学分野のみにとどまるものではなく、より弾力性のある織物の作成や、所望の特性を付与したナノ構造の設計など、材料科学の進歩への道を開くものである。

今後は、これらの方法をより複雑な周期的もつれへと拡張し、理論科学だけでなく、テクニカルファブリック、分子レベルの織り込み構造、メタマテリアルなど、応用科学にも適用し、社会実装することを目指している。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Fukuda M., Kotani M. and Mahmoudi S. Classification of doubly periodic untwisted (p, q)-weaves by their crossing number and matrices Journal of Knot Theory and Its Ramifications 32, 2350032 (2023). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての情報及びデータは同著者から提供されたものです。