二層グラフェン: 高周波電子物性評価を可能とする量子デバイス設計

2024年10月28日

二次元材料の可能性を拓く革新的な高周波測定法

本研究を主導した大塚准教授

二層グラフェンのような二次元材料は、エレクトロニクスに革命をもたらすと期待されている。しかし、実用的なデバイスへの応用にあたっては、まず、そのエキゾチックな電子物性を把握する必要があり、そのための精密な測定手法が求められる。

二次元材料の電子状態は非常に短い時間スケールで変化することが多いため、その特性を評価するためには高周波反射測定法などの高周波測定法が必要となる。

しかし、従来の高周波測定法に使用される量子デバイスのセットアップでは、絶縁体としてSiO2、バックゲートとして高濃度ドープSiを用いており、この構造は浮遊容量を増大させるため、高周波信号のリークが問題となる。

この課題を解決するため、AIMRの大塚准教授らは2023年、SiO2とドープSiを用いない高周波用二層グラフェン量子デバイスを設計した1

「私たちは、基板にアンドープSi、絶縁体に六方晶窒化ホウ素、バックゲートにマイクロスケールのグラファイトを用いた、高周波用二層グラフェン量子デバイスを設計しました。このアプローチにより、高周波信号のリークを低減し、さらに共振回路整合条件の改善や高周波反射測定の感度向上が可能となりました」と大塚准教授は説明する。

研究チームは、直流電流測定と高周波反射測定の両方を用いて二層グラフェン内に形成された量子ドットを精査し、クーロンブロッケード(電子が一つずつ量子ドットを介して流れることを示す菱形構造)を観測した。高周波反射測定でクーロンダイヤモンドを検出できていることから、今回開発したデバイス構造を活用することで、二次元材料の特性を高速に評価できることが示唆された。

大塚准教授は、「今回、二層グラフェンを用いた量子デバイスで高周波の精密な測定が実証できたことで、二次元材料の量子ダイナミクスを解明する新たな道が開かれました。このアプローチによって、これまでにない二次元材料量子系のふるまいが明らかになると期待しています」と今後の進展への期待を語っている。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Johmen T., Shinozaki M., Fujiwara Y., Aizawa T. and Otsuka T. Radio-frequency reflectometry in bilayer graphene devices utilizing microscale graphite back-gates Physical Review Applied 20, 014035 (2023). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての情報及びデータは同著者から提供されたものです。