単原子触媒: Hg⁰をHg²⁺へ迅速かつ持続的に酸化

2023年07月10日

理論と実験を組み合わせて、優れた触媒の探索を効率化

研究室で理論計算を行うHao Li准教授

単原子触媒(SAC)とは、活性金属表面を構成する粒子を単一原子レベルまで小さくすることで、利用効率を最大化したものである。近年、従来のナノ粒子触媒よりも、触媒活性、選択性、コストパフォーマンスの面で優れたSACが開発され、産業界や環境分野での応用が期待されている。

しかしながら有望なSACを探索する際に、2つの大きな課題に直面する。1つ目は、ある程度実験的にトライアンドエラーを積み重ねる必要があること、2つ目は、競争反応のシミュレーションに膨大な計算資源が必要となることである。これらの課題がSAC研究の進展を妨げる要因となっている。

AIMRのLi准教授らは2022年、O2によるHg0の酸化反応を駆動する10種類の3d遷移金属SAC(Sc~Zn)を設計し、律速段階のエネルギー障壁を計算する手法を提案した1。彼らは、3d遷移金属SAC(Sc~Zn)のバーダー電荷、dバンド中心、電気陰性度などの性質に加え、反応速度や熱力学を比較した詳細な理論解析を行い、Feを主成分としたSACがHg0の酸化反応に最も効率的であることを見出した。これは、近年報告された実験結果とも一致する。

研究を主導してきたLi准教授は、「理論計算と3d遷移金属のモデリングにより、O2によるHg0酸化の活性傾向を明らかにしただけではなく、この反応においては初となる有効な触媒設計の指針を提供することができました。今後はFeを主成分とし、Hg0酸化活性、選択性、コストパフォーマンスを最大化するSACの設計と開発に注力していきます」と語っている。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Yang, W., Chen, X., Feng, Y., Wang, F., Gao, Z., Liu, Y., Ding, X. & Li, H., Understanding trends in the mercury oxidation activity of single-atom catalysts. Environmental Science Nano 9, 2041 (2022). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての情報及びデータは同著者から提供されたものです。