グラフェンメソスポンジ:大量生産可能な新規作製法を開発

2021年09月27日

環境負荷の小さい安価な合成ルートの開発に成功

酸化マグネシウムの作用によって、メタンがスポンジ状グラフェンに転換される様子を示す。

The Royal Society of Chemistryより許可を得て参考文献1より改変。

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者が率いる国際チームは、環境負荷が小さく安価な鋳型を用いることで、エッジのない単層グラフェンメソスポンジ(GMS)の作製に成功した。研究チームは、実験と理論を組み合わせて、従来から使用されていた鋳型材料であるアルミナ(Al2O3)の代わりに、酸化マグネシウム(MgO)を利用する技術を開発した。鋳型材をMgOへ切り替えることで、Al2O3を用いた場合に比べて優れた物質輸送と機械特性を有するGMSの作製が可能になるとともに、大量生産への道が開かれた。

実証実験においては、実用化に向けての問題点を検証した結果、大幅な設計変更が必要になることがよくある。

その一例として、スーパーキャパシタ電極材料として、カーボンナノチューブを上回る性能を持つ鋳型材を用いて開発されたエッジのない単層GMSが挙げられる2。この作製法により耐久性の高いGMSが得られるが、従来の方法では、Al2O3ナノ粒子からできている鋳型を溶解除去するために、猛毒のフッ化水素酸を用いる必要があった。さらに、このフッ化水素酸で除去する工程にはコストがかかるという課題もあった。

この課題を克服するには、優れた性能を有するGMSを作製することと、環境負荷が大きくコスト高であるAl2O3鋳型除去を回避すること、の両方を満たす新たな鋳型を用いるGMS作製法を再設計する必要があった。そこで、研究チームは、鋳型材としてMgOナノ粒子を選択して、より安全で安価な作製法を開発した。

AIMR主任研究者の西原洋知教授は、「MgOは、市販の多孔質カーボン製品でよく使われる鋳型材料であり、希薄な酸溶液で容易に溶解します」と説明する。「この特性に着目し、最適な特性を備えたGMSの作製法を検討しました」。

研究チームは、実験と理論を組み合わせた方法により、GMSの形成メカニズムを解明し、単層グラフェン壁をはじめとする優れた特性が得られる最適作製条件を確立した。

その結果、グラフェンシートが、MgO表面にCH4との反応で形成される酸素欠陥サイトで形成されることを明らかにした。さらに、最初のグラフェン層は、その後に積層される層よりもはるかに大きい速度で形成されることがわかり、単層GMSを得るための最適反応時間が明らかになった。

MgOを用いて作製したGMSはスーパーキャパシタ電極材料として優れているだけでなく、Al2O3を用いて作製したGMSよりも機械的に柔軟であることが示された。

「現在、MgOやAl2O3よりもさらに優れた金属酸化物鋳型材料の探索と、それを用いて作製したGMSのスーパーキャパシタ電極材料としての特性効果を調べています」と西原教授は述べ、次のように続けた。「最終的には、精密に制御されたグラフェンナノ材料の開発と大量生産を目指しています」。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Sunahiro, S., Nomura, K., Goto, S., Kanamary, K., Tang, R., Yamamoto, M., Yoshii, T., Kondo, J. N., Zhao, Q., Nabi, A. G., Crespo-Otero, R., Di Tommaso, D., Kyotani, T. & Nishihara, H. Synthesis of graphene mesosponge via catalytic methane decomposition on magnesium oxide. Journal of Materials Chemistry A 9, 14296-14308 (2021). | article
  2. Nomura, K., Nishihara, H., Kobayashi, N., Asada, T. & Kyotani, T. 4.4 V supercapacitors based on super-stable mesoporous carbon sheet made of edge-free graphene walls. Energy & Environmental Science 12, 1542-1549 (2019). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。