金属ガラス: 非晶質のナノ粒子は速く合体する

2020年03月30日

金属ガラスナノ粒子は、結晶ナノ粒子よりも速くコアレッセンスして粗大化する

ナノ粒子同士のコアレッセンスでは、従来型の結晶性金属ナノ粒子(上図)に比べ、無秩序な原子配列を持つ金属ガラスナノ粒子(下図)の方がはるかに速く進む。

参考文献1より改変。CC BY 4.0 の下でライセンスされている。 © 2019 Y. Tian et al.

無秩序なガラス様構造を持つ金属ナノ粒子は、結晶構造を持つ従来型の金属ナノ粒子よりも合体(コアレッセンス)の速度が速いことが、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の実験家たちによって明らかになった1。ナノ粒子の特性はサイズに大きく依存するため、今回の知見はナノ粒子の使用において大きな意味を持つ。

金属ガラスのナノ粒子は、触媒反応、医用材料、複合材料の強化など、多種多様な用途が考えられることから大きな関心を集めている。規則的な結晶構造を持つ従来の金属ナノ粒子とは異なり、金属ガラスナノ粒子は原子が無秩序に並んだ構造を持つ。

ナノ粒子は、そのサイズの微小さゆえに本質的に不安定で、互いにコアレッセンスして表面エネルギーを低下させようとする傾向がある。ちょうど、二つの小さな泡が合体して、より大きくて安定な一つの泡になるのと同じだ。「粗大化」として知られるこの現象は、ナノ粒子の物理的・化学的特性の劣化につながることから、従来の結晶ナノ粒子では広く研究されてきた。しかし、非晶質である金属ガラスのナノ粒子の粗大化機構は、まだほとんど明らかになっていない。

論文の第一著者である大学院生のYuan Tian氏は、「ナノ粒子の粗大化は、焼結速度や焼結後の安定性を左右するので、とても重要です」と説明する。

今回、AIMRの陳明偉(Mingwei Chen)教授が率いる研究チームは、高温でのナノ粒子のコアレッセンスの安定した観察を可能にする、最先端の透過電子顕微鏡内その場加熱観察法を用い、数百度という高温では、金属ガラスナノ粒子が結晶ナノ粒子よりもはるかに速い速度でコアレッセンスすることを見いだした。

「金属ガラスナノ粒子でこのような特異なコアレッセンス挙動が見られたことに、驚きました」とTian氏は言う。「金属ガラスナノ粒子のこの新しい性質は、今後の研究を進める上で重要になってくるでしょう」。

ナノ粒子の粗大化機構に関する理解をさらに深めるため、研究チームはナノ粒子コアレッセンスの数値計算シミュレーションを行った。その結果、金属ガラスナノ粒子の合体速度を従来の結晶ナノ粒子のものよりも速くしている主な要因は、表面原子の移動度の高さとその等方性構造にあることがわかった(図参照)。

「コアレッセンスの過程において、結晶ナノ粒子では表面がファセット化してギザギザになるのに対し、金属ガラスナノ粒子は表面が滑らかな球形を維持します」とTian氏。「こうした形状の違いから表面原子の移動度に差が生じ、それが粗大化機構の違いにつながるのです」。

研究チームは今後、より大きな金属ガラス粒子で粗大化過程を調べる予定だ。「粒子の大きさが約10マイクロメートルを超えると粗大化の機構が変化すると予想されているので、スケールを拡大して研究を続けるつもりです」とTian氏は言う。

References

  1. Tian, Y., Jiao, W., Liu, P., Song, S., Lu, Z., Hirata, A. & Chen, M. Fast coalescence of metallic glass nanoparticles. Nature Communications 10, 5249 (2019). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。