リチウムイオン電池: アノード電極/電解質の界面構造を可視化

2020年02月25日

強力な顕微鏡法によって、リチウムイオン電池の重要だが最も理解の進んでいない構成要素に関して新しい知見が得られた

Li–Au合金化反応によってAuアノードと電解質との界面に形成された2層構造の固体電解質界面(SEI)を示す環状明視野(ABF)-STEM像。

© 2020 Mingwei Chen

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らは、動作中のリチウムイオン電池の負極(アノード)と電解質の界面で、アノード表面に薄膜が、形成・成長・消失する過程を、その場観察した1。今回得られた知見は、より安全で性能の良いリチウムイオン電池を開発する上で重要である。

リチウムイオン電池は、スマートフォンから電気自動車まで、あらゆるものに電気を供給している。約30年前に初めて商品化されて以来、集中的に研究・開発が進められた結果、リチウムイオン電池は今や成熟技術となっている。電池動作によって、アノード表面に極めて薄い膜が形成される「固体電解質界面(SEI)」構造は、アノードを保護する役割を果たすため、リチウムイオン電池の中で最も重要な構成要素の一つであるが、理解がほとんど進んでいない。

SEIは、最初の数回の充放電サイクル中にアノード表面に自然と形成され、アノードをさらなる分解から保護する。AIMRの陳明偉(Mingwei Chen)教授は、このSEI構造を「厚さがほんの数十ナノメートルでありながら、電池の動作に大きな影響を及ぼします。リチウムイオン電池の安全性、出力能力、サイクル寿命を決定づける主要因の一つです」と説明する。

SEIの理解がなかなか進まないのは、動作中の電池内部の構造観察(オペランド観察)が難しいことにあった。

陳教授のグループは今回、リチウムイオン電池内部の条件をよく再現するマイクロ液体セルを新たに開発し、最先端の走査透過電子顕微鏡を用いて、充放電中のマイクロ液体セル内部のSEI構造の変化を観察した。

これにより、サブナノメートル分解能での画像化が可能になり、アノード側の無機層と電解質側の有機層からなるSEIの2層構造を観察することができた(図参照)。「走査透過電子顕微鏡法でSEIの2層構造を明瞭に観察できたことに驚きました」と陳教授は言う。この構造は、アノードと電解質の界面での電解質の還元によってSEI構造が成長することを強く示唆しているという。研究チームはまた、SEI構造の成長が、充放電の初期段階で形成されるとみられるラジカル種によって促進されることも見いだした。

さらに陳教授らは、SEI構造の破損によって無機層が電解質と接触すると、無機層が急速に溶け出してSEI構造が消失することも発見した。

これらの知見は、リチウムイオン電池の改良に役立つはずだ。「今回得られた微視的な洞察は、SEIの動力学を理解する上でも、堅牢なSEIで保護された高性能アノードを開発する上でも、重要な意味を持ちます」と陳教授は言う。

陳教授のチームは今後、電解質添加剤が堅牢なSEIの形成に及ぼす影響について調べる予定である。

References

  1. Hou, C., Han, J., Liu, P., Yang, C., Huang, G., Fujita, T., Hirata, A. & Chen, M. Operando observations of SEI film evolution by mass-sensitive scanning transmission electron microscopy. Advanced Energy Materials 9, 1902675 (2019). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。