金属ガラス: よりよい組み合わせを迅速に発見する

2019年11月25日

金属ガラスの最適化を加速する新しい強力な方法が実証された

微小歯車
金属ガラスの機械的特性は微小歯車などの小型部品に適している。

Natureより許可を得て転載: Nature (Ref. 1), copyright (2019).

さまざまな合金組成の金属ガラスを一度に作製して迅速に評価することのできる手法が、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らによって開発された1。この方法によって、最適な特性をもつ金属ガラスの探索が大幅に効率化すると期待される。

1960年に発見された金属ガラスは、従来の合金のような結晶構造ではなく、ガラス状の無秩序なアモルファス構造をとる合金である。金属ガラスの数々の有用な特性には、優れた加工性、高い機械的強度、耐摩耗性、耐腐食性などが含まれる。

金属ガラスを電子部品や医用インプラントなどの用途に役立てるには、ガラス状態を広い温度範囲にわたって維持できるようにする必要がある。AIMRのZhen Lu研究員は、「一般に、過冷却液体領域の広い金属ガラスは大型サンプルを作製でき、さまざまな構造に成形しやすいため、商業応用に適しています」と説明する。また、金属ガラスに良好な熱的安定性と高い剛性を持たせるには、高いガラス転移温度(ガラスから過冷却液体へと変化する温度)が必要だ。しかし、過冷却液体領域の広さとガラス転移温度の高さを兼ね備えた金属ガラスを従来のような試行錯誤的手法で見いだそうとすれば、おそろしく時間がかかることになる。

今回Lu研究員らは、中国科学院物理研究所をはじめとする、中国と米国の複数の研究機関の研究者たちと共に、3種類の金属(イリジウム、ニッケル、タンタル)からなるさまざまな組成の合金を一度に作製して特性評価する方法を考案した。そして、この方法を用いて、1,162ケルビンという高いガラス転移温度を示す金属ガラスを発見した。

研究チームは、同時スパッタリング法を用いてこれら3種類の金属を直径100 mmの大きなシリコン基板上に同時に堆積させることで、基板上の位置によって組成の異なる合金の薄膜を作製した。次に、基板上の異なる位置で電気抵抗率を測定し、合金組成と電気抵抗率の相関を得た。電気抵抗率はガラス形成能と相関するため、研究チームはその測定値に基づいて金属ガラスが形成された領域を迅速かつ容易に特定することができた。彼らはまた、基板上のさまざまな位置で機械的特性の評価も行った。

「マグネトロン共スパッタリングなどの高スループットの作製法と、高スループットの測定とを組み合わせることで、数百種類の組成と特性を有するサンプルライブラリーをたった数日で探索することができます」とLu研究員は言う。「この手法によって、新材料の開発スピードが大幅に加速し、探索領域も広がると期待されます」。

この方法は、容易に実行できる。「これまでの手法とは異なり、多くのガラス形成系に直接使用することができます」とLu研究員は説明する。「我々が電気抵抗率をマッピングするのに使用した装置の製作コストは3,000ドル(約33万円)ほどで、シンクロトロン放射光を利用できない多くの研究室にとっては現実的で手頃な価格と言えるでしょう」。

研究チームは、今回の方法を他の金属の組み合わせにも応用したいと考えている。Lu研究員は、「今回の高スループットコンビナトリアル手法を用いて、新しい金属ガラスライブラリーを探索し、金属ガラスの応用範囲を広げることを計画しています」と語る。

References

  1. 1. Li, M.-X., Zhao, S.-F., Lu, Z., Hirata, A., Wen, P., Bai, H.-Y., Chen, M., Schroers, J. Liu, Y. & Wang, W.-H. High-temperature bulk metallic glasses developed by combinatorial methods. Nature 569, 99–103 (2019). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。