ナノ多孔質グラフェン: 高い強度と柔軟性を兼ね備える

2019年07月29日

ナノ多孔質グラフェンでできた超軽量三次元構造体において優れた引張強度と延性が実現された

This nanoporous, graphene-based structure has both high tensile strength and ductility.
このグラフェン系ナノ多孔質構造体は、高い引張強度と延性を兼ね備えている。

AAASの許可を得て参考文献1より転載。 © Kashani et al., いくつかの権利は留保されています。専用実施権者:American Association for the Advancement of Science。Creative Commons Attribution NonCommercial License 4.0 (CC BY-NC) の下で頒布されています。

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らによって、極めて高い強度と延性を併せ持つ超軽量のグラフェン系材料が開発された1。こうした特性を兼ね備えた材料は、航空機産業や自動車産業など広範な分野での応用が期待される。

グラフェンは炭素原子が六角形のハニカム格子状に並んだ平坦なシートで、その強度には定評がある。実際、これまでに発見された材料の中で最も強いものの1つであり、鋼鉄の数百倍の強度を持つ。しかし、構造中に欠陥があると強度が低下するため、グラフェンの二次元強度を利用して強い三次元構造を作ることは難しく、なかでも張力(構造を引き伸ばそうとする力)に耐え得る構造の作製は特に困難である。また、グラフェンシートの積層構造では、層間が弱いファンデルワールス力で結合しているために三次元構造体としての強度は望めない。

さらに、強度と延性の両方を備えた軽量の炭素系材料となると、実現は非常に困難である。

今回、AIMR の陳明偉(Mingwei Chen)教授とHamzeh Kashaniポスドク研究員らは、最近開発されたメタマテリアルという人工材料の構造に着想を得て、ナノスケールの細孔を有し、優れた引張強度と延性を示す、超軽量のナノ多孔質グラフェン構造体を作製した。

Kashani研究員は、「メタマテリアルは人工的に作られたマイクロスケールまたはナノスケールの構造体です。そのユニークな特性は、主として、構成材料の特性ではなく構造に由来します」と説明する。「この概念を用い、ナノスケールの共連続構造を採用することで、1枚のグラフェンシートを三次元構造体に成形することができました」。

研究チームは、ナノサイズの細孔を有するニッケルブロック表面にグラフェンを成長させることによって、センチメートルサイズの材料片を作製した。次に、エッチング処理によってニッケルを剥がし、シームレスなチューブ状の三次元グラフェンネットワークを得た(図参照)。

この三次元構造体が高い強度と柔軟性を併せ持つのは、構造要素であるグラフェンが面内張力に対して極めて強く、面外曲げに対して柔軟であることに起因する。「伸長が支配的なモードで変形する軽量多孔質構造体は強度と剛性が高いのに対し、曲げが支配的なモードで変形するものは、強度と剛性は低いですが柔軟性と延性は高いのです」とKashani研究員は説明する。「我々の三次元グラフェン材料は、伸長変形モードと曲げ変形モードの組み合わせによって、負荷に対して全く新しい様式で応答します」。

今回の成果は、グラフェン以外の二次元材料とも広く関係してくる。「我々の研究は、三次元ナノ構造体の構成を賢く設計することによって、材料の二次元特性をうまく利用できることを実証しています 」とKashani研究員は言う。

研究チームは、現在、このグラフェン材料を用いて金属マトリックスやポリマーマトリックスを補強することによって、複合材料の物理的・機械的特性を改良しようとしている。

References

  1. Kashani, H., Ito, Y., Han, J., Liu, P. & Chen, M. Extraordinary tensile strength and ductility of scalable nanoporous graphene. Science Advances 5, eaat6951 (2019). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。