リチウム電池: 貯蔵容量を増大させる電極

2019年04月26日

多孔質グラフェン材料は大量のリチウムを貯蔵・放出できる

 窒素ドープナノ多孔質グラフェンは表面積が非常に大きく、このことがリチウムの貯蔵に役立つ。
窒素ドープナノ多孔質グラフェンは表面積が非常に大きく、このことがリチウムの貯蔵に役立つ。

© 2019 Gang Huang

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らが開発した丈夫な多孔質材料は、リチウム電池に貯蔵できるエネルギー量を劇的に増加させ1、モバイルデバイスの充電間隔を長くすることができる。

充電式リチウムイオン電池は、電子機器や電気自動車への電力供給に広く用いられている。こうした電池では、リチウムイオンは充電時に負極(アノード)に貯蔵され、放電時にはそこから放出される。アノードの一般的な材料であるグラファイト(黒鉛)は、鉛筆の芯にも用いられる安価な炭素材料だが、比較的少量のリチウムイオンしか貯蔵できない。

金属リチウムでできたアノードは、容量がグラファイトよりもはるかに大きいが、問題が二つある。一つは、リチウムがアノードで出入りを繰り返すにつれ、アノード表面からデンドライトやウィスカーと呼ばれる樹枝状や針状の金属リチウムが成長してしまうことだ。もう一つは、やはりリチウムの移動に伴い、アノードの膨張や収縮が起こることである。いずれの現象も、電池の効率を急速に低下させ、発火につながることさえある。

今回、AIMRの陳明偉(Mingwei Chen)教授が率いるチームは、窒素ドープナノ多孔質グラフェンでできたアノードが、グラファイトのアノードよりもはるかに多くのリチウムを貯蔵できることを示した。この材料は軽くて柔軟で伝導性が高いため、電池のアノードとして有望である。

研究チームは、多孔質ニッケル鋳型の内側に窒素ドープグラフェンを成長させた後、エッチング処理でニッケルを溶かして除去した。こうして得られた多孔質構造をもつ窒素ドープグラフェンは、密度が非常に低いため、電池をあまり重くせずに大量のリチウムを貯蔵させることができる。また、窒素ドープグラフェンでは、炭素原子の層状シート中に窒素原子がちりばめられているため、リチウムが結合しやすくなっている。

研究者らは、窒素ドープグラフェンの細孔にリチウムを含浸させた後、性能を大きく損なうことなく700回以上の充放電サイクルを達成できることを見いだした。このサイクル数は、純粋な金属リチウムのアノードを用いた場合の4倍以上である。陳教授のチームの一員であるGang Huang助手は、「極めて高い安定性に、本当に驚きました」と言う。

走査電子顕微鏡像からは、アノード表面にデンドライトは成長しておらず、また充放電時にもアノードの体積がほとんど変化しないことが明らかになった。

さらに、窒素ドープグラフェンアノードの電荷貯蔵容量は、純金属リチウムアノードの理論最大容量と比較して10%低いだけであった。「今回のナノ多孔質アノードの比容量は、リチウムイオン電池に通常用いられるグラファイトアノードのほぼ10倍もあります」とHuang助手は説明する。

今回のアノードを用いた電池は、充電速度が速く、ライバルの純金属リチウムアノードを用いた電池よりも常に優れた性能を示していた。研究チームは、ナトリウムやマグネシウムなどの金属電極を用いる他の電池にも、今回と同じアノード設計を適用したいと考えている。

References

  1. Huang, G., Han, J., Zhang, F., Wang, Z., Kashani, H., Watanabe, K. & Chen, M. Lithiophilic 3D nanoporous nitrogen-doped graphene for dendrite-free and ultrahigh-rate lithium-metal anodes. Advanced Materials 31, 1805334 (2018). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。