結晶構造: 第四の固体相の発見

2019年02月25日

セラミックスに新しい物質相が発見され、固体物質の結晶学的な分類体系を見直す必要が出てきた

新たに発見された物質相は、一方向に周期的に配列した原子が原子柱を形成し、それらがランダムに並んで様々な原子多角柱を構成している。
新たに発見された物質相は、一方向に周期的に配列した原子が原子柱を形成し、それらがランダムに並んで様々な原子多角柱を構成している。

Springer Natureの許可を得て転載; Ref. 1 © 2019

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究チームが、金属酸化物セラミックスの薄膜において未知の物質相を発見した1。結晶、アモルファス、準結晶という既知の固体相に第四の相が加わることになり、新しい機能性デバイスの開発につながると期待される。

かつて固体物質は、規則正しい周期構造をとる結晶と、無秩序な構造のアモルファスのいずれかに分類されていた。しかし1984年、ダニエル・シェヒトマンが準結晶を発見したと報告した。準結晶は、その名の通り結晶でもアモルファスでもなく、長距離秩序を持つが周期性(並進対称性、すなわち、ある構造を一定量平行移動させると元の配置と重なる性質)は持たない。その後、結晶学的な定義が見直され、準結晶発見の功績によりシェヒトマンは2011年にノーベル化学賞を受賞した。

今回、AIMRの幾原雄一教授が率いる研究チームが第四の固体相を発見したことで、実際の状況はさらに複雑であることが明らかになった。

研究チームはまず、原子分解能走査透過電子顕微鏡法を用いて、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ネオジム(Nd2O3)という2種類の金属酸化物の薄膜に新しい物質相を発見した。そして、第一原理計算によってこれらの物質相が安定に存在することを確認し、この発見を裏付けた。

この新たな物質相は、多結晶体からなる試料において、隣り合う結晶粒の境界の近傍に現れることが見いだされた。こうした場所では、一方向に周期的に配列した原子柱が二次元的にランダムに配列していた(図参照)。幾原教授のチームは、一次元秩序を持つこの相に「一次元規則結晶」という名称を与えた。

「これまで、MgOのような単純な酸化物ではそうした構造は報告されておらず、結晶かアモルファスのどちらかだと考えられていたので驚きました」と幾原教授は言う。

この新しい物質相は科学的に面白いだけでなく、それが発現する機能の観点からも興味深い。例えば、MgO結晶は絶縁体だが、今回発見されたMgOの一次元規則結晶は半導体の性質を持つ。幾原教授は、他の特性の発現も期待する。「バルクの一次元規則結晶を作製できれば、セラミックスの脆性(もろさ)も克服できる可能性があります」。

研究チームは、こうした一次元規則結晶相をさらに調べる予定である。「一次元規則結晶の形成機構は未だ解明されていません」と幾原教授は説明する。「新しい機能デバイスを作製するために、より大きな一次元規則結晶体を作製する方法を見つけたいですね」。

References

  1. Yin, D., Chen, C., Saito, M., Inoue, K. & Ikuhara, Y. Ceramic phases with one-dimensional long-range order. Nature Materials 18, 19–23 (2019). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。