超伝導: マヨラナフェルミオンが潜伏していそうな場所

2019年01月28日

金属超薄膜と高温超伝導体からなるハイブリッド物質は、80年前に予測された幻の粒子の探索にうってつけの場所かもしれない

トポロジカル超伝導体の有力な候補である、ビスマス超薄膜と銅酸化物超伝導体のハイブリッド物質の走査トンネル顕微鏡像。
トポロジカル超伝導体の有力な候補である、ビスマス超薄膜と銅酸化物超伝導体のハイブリッド物質の走査トンネル顕微鏡像。

参考文献1より許可を得て改変。Copyright 2018 American Chemical Society.

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らが、高温超伝導体の上に金属超薄膜を成長させることにより、マヨラナフェルミオンと呼ばれる幻の粒子が現れると期待されるハイブリッド物質を作製した1。この系は、スピントロニクスや量子コンピューティングへの新たな応用につながるプラットフォームになる可能性がある。

物質は、陽子、中性子、電子から構成されている。これらはいずれも、1/2、3/2など半整数のスピンを持つフェルミオン(フェルミ粒子)の例である。全てのフェルミオンには、質量が同じで、いずれかの量子特性(電荷など)の符号が逆の反粒子が存在する。例えば、負電荷を持つ電子には、正電荷を持つ陽電子という反粒子がある。

80年以上前、イタリアの理論物理学者エットーレ・マヨラナは、粒子と反粒子が等しくなる特殊なフェルミオンの存在を予測した。いわゆるマヨラナフェルミオン(マヨラナ粒子)である。マヨラナフェルミオンが素粒子として観測されたことはないが、ある種の特殊な物質系では、準粒子(物質中で粒子のように振る舞う励起状態)として出現する可能性がある。

いわゆるトポロジカル超伝導体は、マヨラナフェルミオンが現れる系として特に有望視されている。AIMRの菅原克明准教授は、「トポロジカル超伝導体の最低エネルギー状態は、バルクの電子状態に超伝導ギャップを形成し、表面やエッジにはギャップレス状態を形成すると理論的に予測されています。この表面やエッジにマヨラナフェルミオンが現れるはずなのです」と説明する。「ですから、マヨラナフェルミオンを探す研究者の多くが、トポロジカル超伝導体を集中的に研究しています」。

菅原准教授らの研究チームは今回、トポロジカル超伝導体になる可能性が高いと見込んだハイブリッド物質を作製した。その物質は、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物超伝導体の上に原子6個分の厚さのビスマス膜を成長させたもので、角度分解光電子分光法と走査トンネル顕微鏡法を用いて解析したところ、トポロジカル超伝導体の候補であることを示唆する結果が得られた。実際にトポロジカル超伝導体であれば、マヨラナフェルミオンの生成に利用できる可能性が高い。

これまでの研究で検討された他のトポロジカル超伝導体候補と異なり、菅原准教授らが作製したハイブリッド物質は、高温で超伝導を示し、比較的大きな超伝導ギャップを持つ。いずれも、トポロジカル超伝導体であることの立証とマヨラナフェルミオンの探索に有利な特性である。

「今回の新しい系は、高温で安定なマヨラナフェルミオン探しのプラットフォームになると考えています」と菅原准教授は言う。「そうした粒子は、スピントロニクスや量子コンピューティングへの新たな応用に役立つでしょう」。

研究チームは現在、この系がトポロジカル超伝導体なのか、またこの系にマヨラナフェルミオンが出現し得るかを決定的に示す実験を進めている。

References

  1. Shimamura, N., Sugawara, K., Sucharitakul, S., Souma, S., Iwaya, K., Nakayama, K., Trang, C. X., Yamauchi, K., Oguchi, T., Kudo, K. et al. Ultrathin bismuth film on high-temperature cuprate superconductor Bi2Sr2CaCu2O8+δ as a candidate of a topological superconductor. ACS Nano 12, 10977–10983 (2018). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。