超伝導体: 意外なところに超伝導

2018年09月25日

二元系単酸化物の薄膜が驚くほど高い温度で超伝導を示すことが明らかになった

岩塩構造をもつランタン酸化物(赤色の球と緑色の球からなる結晶格子)の薄膜は、温度が約5ケルビン以下になると電子がクーパー対を形成し(黄色の球のペア)、超伝導を示すことがわかった。
岩塩構造をもつランタン酸化物(赤色の球と緑色の球からなる結晶格子)の薄膜は、温度が約5ケルビン以下になると電子がクーパー対を形成し(黄色の球のペア)、超伝導を示すことがわかった。

© 2018 Kenichi Kaminaga

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らは、ランタン酸化物(LaO)という化合物の薄膜が約5ケルビン以下の温度で超伝導を示すという意外な発見をした1。この発見により、LaOを超伝導体の構成ブロックとした新奇な超格子構造(2種類以上の物質からなる層状周期構造)を作製できる可能性が出てきた。

超伝導探索において、LaOは特に有望視されていた化合物ではない。1980年にランダム配向の結晶からなる多結晶試料が高圧印加下で合成され、金属のように電気をよく流すことがわかったが、その後はほとんど忘れ去られていた。しかし、1980年代後半に発見された高温超伝導を示す銅酸化物材料の一つに、LaO層が絶縁ブロック層として含まれていたことで、再び認識された。

今回、AIMRの福村知昭教授らは、岩塩構造(塩化ナトリウムすなわち食塩と同じ結晶構造)をもつLaOの単結晶薄膜(図参照)を初めて作製し、この薄膜が超伝導を示すことを発見した。

「この発見は意外なだけでなく不可解です」と福村教授は言う。「まず、このように単純な二元系単酸化物が超伝導を示すことは意外です。超伝導体になることがわかっている二元系単酸化物は、ほかに2種類しかありません。また、単結晶薄膜だけが超伝導を示し、ランダム配向の結晶からなる多結晶薄膜が超伝導を示さないのは不可解です。現時点では、この違いをうまく説明することはできません」。

LaOは、5ケルビン(-268℃)以下の温度で超伝導を示す。それほど高い温度には思えないかもしれないが、他のランタンモノカルコゲナイド(LaX;ここでXはイオウ、セレン、テルルのいずれか)がいずれも1.5ケルビン未満で超伝導を発現することに比べれば、はるかに高いといえる。また、LaOは他のランタンモノカルコゲナイドが示す化学的な傾向には従わない。他のランタンモノカルコゲナイドはXの原子量が軽いものほど超伝導転移温度が低くなるのに対し、その中で最も軽いOをもつLaOは最も高い超伝導転移温度を示すのである。

福村教授のチームは、LaOの結晶格子を歪ませることで超伝導転移温度を調節できることも見いだした。

研究チームは現在、他の二元系単酸化物やその超格子を合成しようとしている。それらをLaOと組み合わせることによって、面白い可能性が開かれると期待されるからである。「例えば、ユウロピウム酸化物(EuO)はよく知られた強磁性半導体です。LaOとEuOを組み合わせれば、新しい強磁性超伝導体を作製することができ、超伝導スピントロニクスに役立てることができるでしょう」。福村教授らは既に、岩塩構造をもつさまざまな二元系単酸化物薄膜の成長に成功しているという。そうした酸化物は、超格子の構成ブロックとして利用できる可能性がある。

References

  1. Kaminaga, K., Oka, D., Hasegawa, T. & Fukumura, T. Superconductivity of rock-salt structure LaO epitaxial thin film. Journal of the American Chemical Society 140, 6754−6757 (2018). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。