ナノポーラス材料: 普遍的な作製方法

2018年03月26日

環境に優しい一般的な手法の開発により、細孔のサイズを調節しながら広範な種類の有用なナノポーラス材料を簡単に作製できるようになった

陳明偉教授らのチームは、細孔のサイズを調節しながらナノポーラス合金を作製できる気相脱合金システムを開発した。
陳明偉教授らのチームは、細孔のサイズを調節しながらナノポーラス合金を作製できる気相脱合金システムを開発した。

© 2018 Mingwei Chen

内部に微小空隙のネットワークをもつ材料を作製する普遍的な手法が、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らによって初めて開発された1。いわゆるポーラス(多孔質)材料を製作するこの手法は、制御性が非常によく、環境に優しいという長所がある。軽量で、内部表面積が大きく、電気伝導性と熱伝導性が高く、高速質量輸送特性を示すポーラス材料には、ますます多くの応用が見込まれている。

AIMRとジョンズ・ホプキンス大学(米国)の主任研究者である陳明偉(Mingwei Chen)教授は、ナノポーラス材料の用途について、「スーパーキャパシター、リチウムイオン電池やリチウム–空気電池用の電極、分子検出用のプラズモニック材料などの大表面積機能性材料として用いられています」と説明する。

ナノポーラス材料の作製には、合金から一つもしくは複数の成分を選択的に除去して空洞を形成する「脱合金法」が用いられることが多い。しかし、従来の電気化学的脱合金法は、一部の合金にしか適用できない上、かなりの量の化学廃棄物が生じてしまう。

これに対して、陳教授のチームが開発した新しい気相脱合金法では、原理的には周期表の安定固体元素のすべてをナノポーラス材料にすることができる。さらに、化学廃棄物を全く生じないだけでなく、合金から除去した成分を回収することさえできる。「回収した物質は純度が高く、合金の作製や表面コーティングに再利用することができます 」と陳教授。

研究チームは、高温炉、真空システム、蒸発した合金成分を回収するための凝縮トラップを備えた、特別仕様の脱合金システムを製作した(図参照)。そして、コバルト亜鉛合金Co5Zn21をモデル系として、脱合金時間と温度と圧力の変化が細孔のサイズと位置に及ぼす影響を調べた。これらのパラメーターを微調整することで、コバルトの細孔サイズを数十ナノ~数マイクロメートルの範囲で調節することができた。例えば、圧力を低くして温度もやや低めにすると、多数の微小な細孔がむらなくつながったネットワークが得られた。蒸発した亜鉛は、トラップから完全に回収された。

今回の手法は、8種類の亜鉛含有合金について実証された。「材料は無機元素から金属元素、軽量金属から貴金属、低融点金属から高融点金属まで多岐にわたります」と陳教授は言う。研究チームは、各種のナノポーラス材料が同じ手法で作製できることの実証を続けている。

陳教授は、「このナノポーラス材料作製法はスケーラブルです」と補足する。現時点では一度に作成できる材料は数十センチメートルだが、工業用にスケールアップできるはずであるという。陳教授は、スケールアップの前に、このプロセスの理解をさらに深めたいと考えている。「気相脱合金時のナノ細孔の形成と発達の動力学を理解するために、基礎研究を始めました」。

References

  1. Lu, Z., Li, C., Han, J., Zhang, F., Liu, P., Wang, H., Wang, Z., Cheng, C., Chen, L., Hirata, A. et al. Three-dimensional bicontinuous nanoporous materials by vapor phase dealloying. Nature Communications 9, 276 (2018). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。