酸化物材料: 原子構造に起因した二次元伝導性の起源を解明

2018年03月26日

酸化物伝導体に絶縁層を挿入する手法で二次元電気伝導性を実現し、原子構造に由来する電気特性発現メカニズムを解明した

ニオブ酸ストロンチウムの走査透過電子顕微鏡写真。擬一次元伝導(青色電子と白色矢印で示す)が起こる鎖状の層が、ジグザグ状の絶縁層で挟まれている。
ニオブ酸ストロンチウムの走査透過電子顕微鏡写真。擬一次元伝導(青色電子と白色矢印で示す)が起こる鎖状の層が、ジグザグ状の絶縁層で挟まれている。

© 2018 Chunlin Chen and Yuichi Ikuhara

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の幾原雄一教授らの研究グループは、原子分解能走査透過電子顕微鏡法(STEM)と第一原理計算を用いて、二次元電気伝導性を示す材料の結晶構造と電子輸送特性の起源を明らかにした1。こうした二次元伝導性を示す化合物は、最先端の電子デバイス開発の観点から有望視されている。

超伝導、磁性、強誘電性など、有用な機能特性を示す固体酸化物は、これまで広く研究されてきた。

中でも、二次元に制限された電気伝導性を示す酸化物が注目されている。その一例が、SrnNbnO3n+2という化学式で表されるニオブ酸ストロンチウムである。この化合物は、nの値に依存して、電気伝導性、絶縁性、そして擬1次元伝導性(非等方的な二次元伝導性)を示す。

同研究グループの陳春林(Chunlin Chen)准教授は、「二次元伝導性を示す材料は、金属–酸化物–半導体電界効果トランジスタや高電子移動度トランジスタなどの新しい電子デバイスに応用される可能性があります」と言う。

AIMRの幾原教授とIBMチューリッヒ研究所(スイス)のJohannes Georg Bednorz博士(AIMRアドバイザー)が率いる研究グループは、SrnNbnO3n+2が示す特異な電気特性の起源を解明するため、nの値が異なる複数のSrnNbnO3n+2化合物の原子および電子構造を、原子分解能STEMを用いて精密に解析した。

その結果、各SrnNbnO3n+2化合物は、ジグザグ状の原子層と鎖状の原子層が交互に積み重なった積層構造をとることが明らかになった(図参照)。これらの層が絶縁性と伝導性のどちらを示すかは、ニオブイオンの原子価に依存している。電子エネルギー損失分光法を用いてニオブイオンの原子価を調べた結果、ジグザグ状の層が絶縁性を示し、鎖状の層が伝導性を示すことがわかった。

さらに第一原理計算を用いて、絶縁性と伝導性の起源を詳細に解析した。その結果、各層はニオブイオンを中心に持つ酸素原子の八面体(NbO6)を形成しており、この八面体中の原子に伴う電子は結晶中を動き伝導性に寄与するが、ジグザグ層の八面体は著しく歪んでおり、その電子が局在化することで絶縁性を発現することがわかった。

今回の結果は、ニオブ酸ストロンチウムの原子構造に由来する電気特性発現メカニズムを解明しただけでなく、三次元伝導体に絶縁層を導入することによって二次元伝導性材料を開発できることを示している。「今後、他の材料でもこの手法が有効か検証するつもりです」と陳准教授は言う。

References

  1. Chen, C., Yin, D., Inoue, K., Lichtenberg, F., Ma, X., Ikuhara, Y. & Bednorz, J. G. Atomic-scale origin of the quasi-one-dimensional metallic conductivity in strontium niobates with perovskite-related layered structures. ACS Nano 11, 12519−12525 (2017). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。