金属ガラス: 明らかになった不均一性

2018年02月26日

金属ガラスにおけるナノスケールの不均一性は、2種類の領域の存在に由来していることが示された

金属ガラス中に高密度領域(赤色部分)と低密度領域(青色部分)という2種類の領域が存在していることを示す走査透過電子顕微鏡写真。2種類の領域のクラスター構造を顕微鏡写真に重ねて示す。
金属ガラス中に高密度領域(赤色部分)と低密度領域(青色部分)という2種類の領域が存在していることを示す走査透過電子顕微鏡写真。2種類の領域のクラスター構造を顕微鏡写真に重ねて示す。

© 2018 Akihiko Hirata

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らが、最新の解析技術を用いて金属ガラスのナノスケール構造を調べ、ナノスケールの不均一性の起源を初めて明らかにすることに成功した1

一般に、金属は非常に秩序正しい結晶構造を持つ。しかし、一部の金属は、特定の条件下でガラスのような無秩序構造を形成する。こうした材料は金属ガラスと呼ばれ、1960年に初めて報告されて以来、材料科学者の興味をかき立ててきた。

マクロスケールではランダムな構造をとる金属ガラスが、ナノスケールの測定ではサンプル上の位置によって異なる刺激応答を示すことは、研究者たちを困惑させてきた。この結果は、金属ガラスがナノスケールでは不均一であることを示唆しているからだ。不均一性が存在する理由を解明しようとする試みは、いずれも失敗に終わっていた。

今回、AIMRの平田秋彦准教授らは、走査型透過電子顕微鏡を用いたオングストロームビーム電子回折法によって、金属ガラスが2種類のナノスケール領域から構成されていることを明らかにした。一つはひずんだ20面体秩序を持つ高密度領域で、もう一つは、高密度領域に比べると無秩序だが、部分的に結晶秩序を示す低密度領域である(図参照)。

「従来のX線、中性子、電子散乱法では、ナノスケール領域の構造の違いを確認するのは極めて困難です」と平田准教授は言う。「当研究グループが開発したオングストロームビーム電子回折法を用いることによって初めて、金属ガラス中にある空間的に不均一な局所的構造秩序を検出することができました」。

金属ガラス中のナノ構造は、その特性を決める重要な要素である。「結晶材料の強度と硬度は、基本的には結晶粒径と転位密度で決まります」と平田准教授は言う。「しかし、金属ガラスは無秩序なアモルファス構造をとっているため、そうした重要な構造指標がありません。私たちは、金属ガラスの空間的不均一性が、その機械的・動的特性を決定する上で重要な役割を果たしているのではないかと考えています」。

今回の知見は、金属ガラスの理解に重要な影響を与えるものだ。「ガラス状材料に見られる多くの興味深い現象は、その複雑さに起因しています」と平田准教授は言う。「単純化したモデルでは、ガラス状材料は完全に無秩序なものとして扱われます。しかし、今回の研究で、金属ガラスにはナノスケールの2種類の領域があることが示されました。この無秩序系を形成する基本的機構が存在するはずです」。

研究チームは、今後、この不均一性がガラスの機械的特性に及ぼす影響を検討し、他の金属ガラスにも同様の不均一性が存在するのか探ることを予定している。

References

  1. Zhu, F., Hirata, A., Liu, P., Song, S., Tian, Y., Han, J., Fujita, T. & Chen, M. Correlation between local structure order and spatial heterogeneity in a metallic glass. Physical Review Letters 119, 215501 (2017). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。