トポロジカル絶縁体: 電流を制御する

2017年02月27日

トポロジカル絶縁体の表面を流れる電流を制御するデバイスが初めて実証された

3次元トポロジカル絶縁体の表面電流を制御するために形成されたトポロジカルp-n接合。 図中文字Source: ソースDrain: ドレインSi(Back gate): Si(バックゲート)
3次元トポロジカル絶縁体の表面電流を制御するために形成されたトポロジカルp-n接合。

図中文字
Source: ソース
Drain: ドレイン
Si(Back gate): Si(バックゲート)

参考文献1より複製。CC BY 4.0 © 2016 N. H. Tu et al.

注目の新材料の表面を流れる電流の制御に利用できる接合が、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の研究者によって開発された1。この接合は、超低電力小型記憶デバイスの実現につながることが期待される。

3次元トポロジカル絶縁体と呼ばれるエキゾチック材料は、スピントロニクスという革新的な省電力技術を実現する可能性があるとして、科学者の間で有望視されている。電子の電荷を利用するエレクトロニクスと異なり、スピントロニクスでは主として電子のスピンという量子的性質を利用する。

トポロジカル絶縁体は、内部は電気絶縁体であるが、表面では電流が流れ、その損失は非常に小さい。しかし、トポロジカル絶縁体をスピントロニクスに利用するためには、表面電流を制御する方法を考案する必要がある。

従来の電子デバイスの電流制御によく用いられているp-n接合は、電子が不足した部分(正の「p」側)と電子が過剰な部分(負の「n」側)からなり、電流はp側からn側へと流れるが、逆向きには流れない。

しかし、従来のp−n接合は、トポロジカル絶縁体の表面を流れる電流の制御には使えないため、トポロジカル絶縁体において電流のオンオフ切り替えを行う便利な方法を見いだす必要があった。

AIMRの谷垣勝己教授と東北大学大学院理学研究科物理学専攻の田邉洋一助教らは、トポロジカル絶縁体Bi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3薄膜の表面にトポロジカルp–n接合を作製した。この薄膜はn型であるため、表面に電子受容性有機分子層を蒸着して化学ポテンシャルを調節することによって、接合のp側を形成した。

しかし、それだけでは接合形成に不十分であった。谷垣グループのプロジェクトリーダーである田邉助教は、「3次元トポロジカル絶縁体には上面と底面があるので、両面の化学ポテンシャルを慎重に制御しなければならないのです」と説明する。そこで研究者たちは、有機分子層と電界効果トランジスタ技術を組み合わせて化学ポテンシャルを制御することにした。

こうして作製したp-n接合のゲート電圧を変化させると、電気輸送に劇的な変化が見られた。接合にかける電圧を変化させるだけで、電流を制御することができたのである。

現在、研究者らは、接合の最適化に取り組んでいる。「今回のトポロジカルp–n 接合のオンオフには、非常に高いゲート電圧が必要です」と田邉助教は言う。「物質と有機分子の組合せを変えることで、スイッチング電圧の低減を試みています」。

References

  1. Tu, N. H., Tanabe, Y., Satake, Y., Huynh, K. K. & Tanigaki, K. In-plane topological p-n junction in the three-dimensional topological insulator Bi2−xSbxTe3−ySey. Nature Communications 7, 13763 (2016). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。