全固体リチウム電池: 高品質の界面を実現する

2015年06月29日

リチウム系材料間で高品質の固体/固体界面を実現し、次世代高エネルギー密度電池の開発に弾みをつける

パルスレーザー堆積法で高品質薄膜を作製する様子。
パルスレーザー堆積法で高品質薄膜を作製する様子。

© 2015 Susumu Shiraki

蓄電池市場を牽引するリチウムイオン電池は、携帯電話から火星探査機まであらゆる機器に用いられている。しかし、いずれも液体電解質を用いているため、液漏れや爆発のおそれがある。リチウムイオン電池の安全性を高めるために、多くの研究者が固体電解質の開発に取り組んできたが、電池の性能が低くなってしまうことが大きな問題になっていた。東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の研究者らは、このたび、安全で高性能の高エネルギー・高出力密度電池の開発につながる、抵抗が非常に低いリチウム系固体界面を実現した1

研究チームの白木将准教授は、「全固体電池の主な欠点は、電極/電解質界面のイオン伝導性が低いことです」と説明する。電池のエネルギー密度と出力密度を高くするためには、電池を構成するすべての要素が高いイオン伝導性を持っている必要がある。しかし、固体電解質を用いた電池は、電極/電解質界面に空間電荷層が形成される影響で、イオン伝導性が低くなってしまう。

これまで調べられてきた固体電解質のほとんどが粉状の材料からできていたため、界面が曖昧になり、イオン伝導性を定量的に評価することが困難だった。白木准教授らはこの問題を克服するため、シャープで明確な界面を持つ高品質の薄膜を成長させる手法を用いて電解質を作製した。

白木准教授は、「全固体薄膜電池を作製しようとする研究者の多くが、正極と負極の内部短絡、積層膜間の付着力の弱さと界面抵抗の高さなどに起因する問題に直面します」と指摘する。

研究チームは、高品質薄膜成長の豊富な経験を生かしてこれらの困難を回避し、マグネトロンスパッタリングという手法を用いて、真空中でコバルト酸リチウム(電極)上に厚さ100ナノメートルの窒素添加リン酸リチウム膜(電解質)を直接成長させた。

この手法により得られた電極/電解質界面の抵抗値は非常に低く、他の全固体電池で報告された値の10分の1以下で、液体電解質を使った電池よりも低かった。つまり、この電極と電解質の組み合わせでは、界面の空間電荷層による悪影響は無視できるほど小さいことが明らかになった。

今回の成功は成膜中の厳しい品質管理の賜物である、と白木准教授は考えている。「界面抵抗を低くする鍵は、電解質膜を作製する際にスパッタリングによるダメージを最小限に抑え、界面の汚染を避けることにあるからです」。

さらに、「今回の研究結果は、清浄な電極/電解質界面を作製すれば、低い界面抵抗を持つバルク型全固体電池を開発できることを示唆しています」と白木准教授は言い、そのためには一連の工程を工業的な作製条件に適合させる必要がある、と指摘する。

研究チームは、他の電極/電解質の組み合わせも検討する予定である。「結晶性電解質を使い、正極、負極、電解質のエピタキシャル膜を積層することによる全固体電池の作製などを計画しています」と白木准教授は語る。

References

  1. Haruta, M., Shiraki, S., Suzuki, T., Kumatani, A., Ohsawa, T., Takagi, Y., Shimizu, R. & Hitosugi, T. Negligible “negative space-charge layer effects” at oxide-electrolyte/electrode interfaces of thin-film batteries. Nano Letters 15, 1498–1502 (2015) | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。