ナノ材料: 骨組みを作る

2014年09月29日

微細な溝を刻んだ高分子ナノシートを骨インプラントに貼り付けるという新しい骨再生・骨修復方法が示された

微細な溝パターンが刻まれたナノシートを骨の表面に貼り付けた様子。
微細な溝パターンが刻まれたナノシートを骨の表面に貼り付けた様子。

© 2014 WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim

骨の表面は、通常、骨膜と呼ばれる薄い膜に覆われている。骨膜は、支持体として骨に機械的強度を与えるだけでなく、幹細胞を分化することによって骨の主成分である骨芽細胞を生成するため、損傷した骨組織の再生に積極的に関与している。しかし、これまで、骨修復の組織工学的手法において、骨膜の存在が考慮されることはほとんどなかった。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のXuetao Shi助教らは、国内外の研究機関の共同研究者らとともに、骨膜の微細構造に着想を得た人工骨膜を作製した1。天然の骨膜は長軸方向に配列した細胞とコラーゲン線維で構成されているが、この人工骨膜は微細パターンを形成した高分子ナノシートからできており、骨修復治療に適しているという。研究者らは、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)ナノシートに約50μm間隔で溝を刻むことによって、天然骨膜の形状を模倣した。

Shi助教らは、このPLGAシートを骨や骨修復に関係するさまざまな材料(ニワトリの上腕骨、チタン合金インプラント、マクロポーラスおよびマイクロポーラスバイオセラミックスでできた再生医療用足場材など)に非共有結合的に固定することに成功した(図参照)。ナノシートはこれらの材料表面にしっかりと貼り付き、容易に剥がれることはなかった。このことはナノシートを足場材に応用するうえで好都合である。また、幹細胞を正しく整列させるためには、骨や骨再生足場材に貼り付けた後もナノシートの溝が維持されていることが重要であり、実際にこの溝が残っていることが蛍光顕微鏡観察で明らかになった。

研究チームは、PLGAナノシートが骨再生の促進に適しているかどうかを調べるため、骨に分化できるヒト間葉幹細胞を人工骨膜上に播種した。すると、幹細胞が溝に対して平行に整列する様子が観察された。

「この結果は、人工骨膜が骨再生用幹細胞の貯蔵庫として機能するだけでなく、骨細胞に分化する幹細胞の数を調節できることも示しています」とShi助教は説明する。さらに、効果的な骨修復には骨膜がタンパク質・遺伝子発現レベルを誘導することが重要だが、ナノシート表面に刻まれた微細な溝パターンは、天然骨膜と同じように培養細胞のタンパク質・遺伝子発現レベルを誘導するのに役立っていた。

研究者らは現在、動物モデルを用いて、溝付きナノシート上での幹細胞の骨形成特性を調べることを計画している。再生医療用多孔性足場材に貼り付けたPLGAナノシートは、1か月程度で分解されると予想されている。1か月という時間は、幹細胞が正しく整列して骨芽細胞に分化するのに十分な長さであり、再生医療への応用が期待される。

References

  1. Shi, X., Fujie, T., Saito, A., Takeoka, S., Hou, Y., Shu, Y., Chen, M., Wu, H. & Khademhosseini, A. Periosteum-mimetic structures made from freestanding microgrooved nanosheets. Advanced Materials 26, 3290–3296 (2014). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。