ナノ材料: 微小な薄片が秘める大きな可能性

2014年07月28日

光検出器への応用に関して、グラフェンよりも優れた特性を持つ可能性のある原子シートが新たに発見された

2次元テルル化ガリウム(GaTe)シートを利用した新しいセンサーは、光信号に対する感度が極めて高い。
2次元テルル化ガリウム(GaTe)シートを利用した新しいセンサーは、光信号に対する感度が極めて高い。

参考文献1より許可を得て改変。© 2014 American Chemical Society

グラフェンは炭素の単原子層からなる非常に薄い材料であり、電子デバイスの小型化、高速化、高効率化を可能にし、エレクトロニクスに大変革をもたらすと期待されている。けれどもグラフェンには、可視光のほんの一部しか吸収できないという欠点があるため、光検出器(太陽電池やデジタルカメラの動作に欠かせないオプトエレクトロニクス部品)に使用することはできない。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の谷垣勝己教授らは、テルル化ガリウム(GaTe)フレークという薄片状のナノ構造材料を新たに発見し1、既存のどの2次元(2D)層状材料よりも高い感度と速い電気的応答速度で光信号を検出できることを確認した。

グラフェンの骨格は六角形の格子状になっており、電子はこの中を途方もないスピードで移動することができる。しかし、グラフェンは「間接」光学バンドギャップを持つため、光との相互作用は中間状態のある迂回した緩和経路を介して進み、時間とエネルギーを損失してしまう。これに対して、「直接」バンドギャップ材料は、光子を直ちに光電流に変換することによって大量の光子を吸収することができ、光に対する感度が極めて高い。

研究者らは、原子レベルの薄さの直接バンドギャップ材料を求めて広く探索を行い、GaTeナノフレーク状態の結晶を見いだした。GaTeは、Te–Ga–Ga–Te原子の2Dシートが重なって弱く結合した多層複合体を形成している(図参照)。このユニークな構造のおかげで、GaTeは興味深いオプトエレクトロニクス物性を示す。その上、軽量で、合成が容易である。

しかし、研究チームがこの材料を詳しく調べはじめると、重大な問題が明らかになった。GaTeのバルク結晶を薄くして単層にすると、直接バンドギャップから最終的には間接バンドギャップへと変化するのである。この系の光学特性をより深く理解するため、英国の理論研究者と共同研究を行い、10層の有限積層体であれば、直接バンドギャップを維持しながら2D系の優れた伝導性を得られることを突き止めた。

この多層GaTeの作製にあたり、研究者らはセロハンテープを用いて、バルクのGaTe結晶から非常に薄い薄片をはがし取るという、古典的だが効果的な方法を用いた。これは、元来は単層グラフェンを単離するために考案された方法だが、本研究でも望みどおりの多層GaTeフレークを得ることができた。はがし取ったGaTeフレークをシリコンデバイスに移し取り、実験を行ったところ、広い範囲の光に対して数ミリ秒以内に応答できることが明らかになった。重要なのは、GaTeナノフレークへの光照射で生成した電子による光電流が、グラフェンの場合より数桁大きかったことである。

「光検出器において高感度と高速応答を同時に実現するためには、直接バンドギャップが非常に重要です」と谷垣教授は言う。「固有の直接バンドギャップが得られるGaTeナノフレークは、将来の光検出器への応用において、グラフェンを超える有望な候補となるでしょう」。

References

  1. Liu, F., Shimotani, H., Shang, H., Kanagasekaran, T., Zólyomi, V., Drummond, N., Fal’ko, V. I. & Tanigaki, K. High-sensitivity photodetectors based on multilayer GaTe flakes. ACS Nano 8, 752–760 (2014). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。