金属ガラス: 局所的秩序の解明

2013年09月30日

金属ガラスの20面体構造が、原子スケールの電子線イメージング法で明らかになった

左の青色の構造は金属ガラス中に存在すると推定されていた正20面体局所原子構造を、右の赤色の構造は金属結晶の面心立方構造を、中央の黄色の構造は実際の金属ガラス中の歪んだ20面体構造を表している。上段と下段は同じ構造を違う角度から見た図である。
左の青色の構造は金属ガラス中に存在すると推定されていた正20面体局所原子構造を、右の赤色の構造は金属結晶の面心立方構造を、中央の黄色の構造は実際の金属ガラス中の歪んだ20面体構造を表している。上段と下段は同じ構造を違う角度から見た図である。

© 2013 Akihiko Hirata

私たちが普段目にするガラスのほとんどは、透明で、ごくありふれた物質に見える。だが、よく調べると、ガラスの構造は興味深く、基本的には液体であり、材料中の原子はランダムに並んでいる。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の研究者が率いる国際共同研究チームは、金属元素のみから構成される「金属ガラス」と呼ばれるガラスを調べ、その構造が20面体幾何構造に基づく局所的秩序を持っていることを実験的に明らかにした1。「これは、半世紀以上前に提唱された理論予測を裏付けるもので、実験的に直接示されたのは今回が初めてです」と、チームを発見に導いたMingwei Chen(陳明偉)教授は話す。

多くの金属中の原子は完全な球のように振る舞い、整列して、面心立方構造や体心立方構造などの完全な結晶を形成するが、金属ガラスは溶融後に急冷するとガラスを形成する。科学者たちは結晶化せずにガラスが形成される理由がわからず、急冷時に原子が20面体構造をつくると結晶化が起こらなくなるのではないかと推測していた。20面体構造は、見かけは結晶の面心立方構造と似ているが、広い領域にわたった周期構造を形成できないという重要な違いがある(図参照)。

Chen教授と平田秋彦准教授らの研究グループは、金属ガラスの構造を解明するため、オングストロームビーム電子線回折法という手法を用いた。原子数個分の幅の細い電子線をガラスサンプルに当てると、ガラス中を通過する電子が原子によって反射されてスクリーンに衝突し、そこで反射パターンが記録される。このパターンをコンピューターで解析することによって、サンプル中の原子の位置を特定できる。

研究者たちは、金属ガラス中の原子が20面体構造をとっていることを確認できたが、過去に推測されたような正20面体構造ではなく、不完全な20面体であることも見いだした。興味深いことに、こうした歪みによって、20面体構造は面心立方構造に近い構造になる。

オングストロームビーム電子線回折法は、化合物を原子スケールで研究する強力な手法であり、金属ガラスの局所的秩序の発見以外にも利用できる、とChen教授は説明する。「私たちは、不規則材料の構造と特性の間にある真の関係を理解するための出発点に立ったところです。今や、局所的な原子構造を直接研究できる確実な実験手法が手に入りました。今回のケースでは、この手法で原子スケールの構造とガラス形成との相関を示すことができました。おそらく、ガラス転移の構造的起源も解明できるようになるでしょう」。

References

  1. Hirata, A., Kang, L. J., Fujita, T., Klumov, B., Matsue, K., Kotani, M., Yavari, A. R. & Chen, M. W. Geometric frustration of icosahedron in metallic glasses. Science 341, 376–379 (2013). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。