燃料電池: 高活性のカソード触媒

2013年07月29日

電気化学的脱合金化法によって作製された白金-銅触媒は、燃料電池のカソードでの酸素還元反応に用いることができる

燃料電池の酸素還元反応に用いるために開発されたナノポーラス白金-銅触媒。
燃料電池の酸素還元反応に用いるために開発されたナノポーラス白金-銅触媒。

© 2013 Mingwei Chen

安価で効率の良い燃料電池は、よりクリーンなエネルギー源として近い将来の実用化が期待されている。燃料電池は化学エネルギーを電気に変換するデバイスであり、燃料を燃やして熱を発生させる代わりに、エネルギーを電子として取り出して電気回路に送り込む。最も基本的な燃料電池であるプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)では、一方の電極(アノード)で水素ガスが酸化されてプロトンと電子を生じる。この電子が電気回路を通じて他方の電極(カソード)に移動し、そこで酸素を還元する。最後に、生成した酸化物アニオンが、膜を通過してきたプロトンと結合することによって、水が生成する。これは、水素が燃料として燃えるときに起こる変換と同じものである。

市販の燃料電池システムのカソードでは、カーボンの表面に白金を吸着させた触媒を用いて酸素還元反応(ORR)を行っている。しかし、反応速度は遅く、効率よく反応させるためには高価で希少な白金が大量に必要になる。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の陳明偉(Mingwei Chen)教授とXingbo Ge助手は、共同研究者とともに、安価で活性の高いORR白金-銅触媒を開発した1。この触媒は、ナノポーラス白金-銅合金のコアを純粋な白金の薄層で覆った構造をとっている(図参照)。

これまでの研究から、こうしたナノ粒子触媒の機能を向上させるためには、コア中の白金と銅の比率を精密に制御することが特に重要であることがわかっている。「二元金属粒子の組成をナノスケールで制御することは、極めて難しいです」と陳教授は言う。「しかし、私たちの電気化学的脱合金化法は、合金から銅を選択的に溶解させることができるので、従来の方法に比べて非常に高い制御性を実現しました」。脱合金化過程は印加した電圧に支配されるため、触媒の最終組成を調節することが可能になり、最適な触媒組成を精密に決定することができるためである。

陳教授らによると、この材料の触媒活性は表面の薄い純白金層によるものだが、合金コアの組成を変えることによって触媒活性を向上させることができる。この性質は、白金薄層中の原子とコアとの結合の仕方に起因している。研究チームは、コア中の白金-銅の比を調節することによって、市販の白金/カーボン触媒より優れたナノポーラス材料を作製できた。

「現在、この脱合金化法を利用して、エネルギー関連用途向けに、ほかの種類の二元金属触媒を作製しているところです」と陳教授は話す。今後は企業と共同で、これらの触媒の実用化も進めていく予定だという。

References

  1. Ge, X., Chen, L., Kang, J., Fujita T., Hirata, A., Zhang, W., Jiang, J. & Chen, M. A core-shell nanoporous Pt–Cu catalyst with tunable composition and high catalytic activity. Advanced Functional Materials 23, 4156-4162 (2013). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。