グラフェン: 最も薄い超伝導体

2013年03月25日

極限の薄さの炭素系超伝導体が作成されたことにより、機能性グラフェンの時代が到来するかもしれない

カルシウム系グラファイト層間化合物(GIC)C6Caの概略図。炭素原子(C、灰色)からなる2枚のグラフェンシートの間に、カルシウム原子(Ca、黄色)が挟み込まれている。このグラフェン-カルシウムサンドイッチは、炭化ケイ素(SiC)基板上に形成されている。
カルシウム系グラファイト層間化合物(GIC)C6Caの概略図。炭素原子(C、灰色)からなる2枚のグラフェンシートの間に、カルシウム原子(Ca、黄色)が挟み込まれている。このグラフェン-カルシウムサンドイッチは、炭化ケイ素(SiC)基板上に形成されている。

© 2012 K. Kanetani et al.(参考文献1)をもとに複製。
 

「夢の材料」と呼ばれるグラフェンは、原子1個分の厚さの炭素シートである。鉛筆の芯などに使用されている黒鉛(グラファイト)は、グラフェンが積み重なった材料だ。2004年にグラフェンシートが単離されて以来、二次元材料の研究と利用への道が大きく開かれたが、バルクのグラファイトも実用的な応用への期待から関心を集めている。なかでも、グラフェン層とグラフェン層の間に物質を挿入して「グラファイト層間化合物(GIC)」を作成する方法は、バッテリー内にリチウム原子を貯蔵する方法としてさかんに研究されている。興味深いことに、一部のGICには抵抗なく電気を通す超伝導という現象が見られる。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の高橋隆教授および一杉太郎准教授の研究チームは、同大学物理学科の研究者と共同で、わずか2枚のグラフェン層の間にカルシウム原子を捕捉することによって、極限の薄さの2次元炭素系超伝導体であるC6Caを作成した(図参照)。この「サンドイッチ」材料は、最も薄い形態のカルシウム系GICでありながら、バルクグラファイトとしての長所をもつ。

C6Caは既知の超伝導GICのなかで最も高い超伝導転移温度を持つため、非常に注目すべき材料といえるだろう。研究チームの一員であるAIMRの菅原克明助教らは、カルシウム原子を挟むグラファイト層の厚さを減らし、極限まで薄くすることに成功した。この極薄のグラフェン-カルシウム-グラフェン材料を作成するため、研究チームはまず、炭化ケイ素(SiC)基板上の2層グラフェン膜にリチウムイオンを導入した。最初からカルシウムを導入するより、小さいリチウム原子を先に導入しておく方が容易であるからだ。続いて、グラフェン-リチウム-グラフェン中間体にカルシウムを蒸着し、これを加熱することにより、層間のリチウム原子をカルシウムと交換した。「私たちは当初、ミリメートル単位の厚さのC6Caを作成するためにこの方法を開発しました。今回は、それを2層グラフェン用に改良したのです」と菅原助教は説明する。

こうして作成された材料は非常に薄かったが、研究者らはこれを用いていくつかの実験を行うことができた。「最も重要な成果は、極限の薄さのGICの電子構造を評価したことです」と菅原助教は強調する。 「私たちの研究結果は、GIC系の超伝導を理解するための基礎となるはずです」。現在、研究チームは高効率マイクロバッテリーの作成など、超伝導以外の用途にGICを応用する際にもこの方法が有効であると考えている。「この研究領域は、グラファイト電極を用いた最先端のバッテリーに関する物理的・化学的過程を根本的に理解するのに役立つでしょう」と菅原助教は言う。

References

  1. Kanetani, K., Sugawara, K., Sato, T., Shimizu, R., Iwaya, K., Hitosugi, T. & Takahashi, T. Ca intercalated bilayer graphene as a thinnest limit of superconducting C6Ca. Proceedings of the National Academy of Sciences USA 109, 19610–19613 (2012). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。