金属ガラス: 曲げたところが結晶化するガラス

2012年12月21日

非晶質金属を曲げるときに部分的な結晶化が起こる理由が解明された

X線顕微鏡により得られた回折像。この像から、曲げられた金属ガラスリボンに関する詳細な情報が得られた。
X線顕微鏡により得られた回折像。この像から、曲げられた金属ガラスリボンに関する詳細な情報が得られた。
 

© 2012 American Physical Society

金属は通常、結晶構造を持っている。つまり、金属中の原子は、反復するパターンを作って整然と並んでいることが多い。 これに対して、金属ガラス中の原子の並び方には特定の長距離秩序がない。金属ガラスが変形に対して高い復元力を示すのは、原子の並び方が不規則で、結晶破壊の原因となるすべり線が存在しないからだ。しかし、一部の金属ガラスでは、曲げたときに結晶領域が形成されることが知られている。こうした結晶領域が形成される理由は、これまではっきりしなかった。

今回、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のAlain Reza Yavari主任研究者は、国際研究チームを率いて理論と実験を組み合わせた研究を行い、この結晶化挙動を説明するモデルを提案した1。研究チームはX線顕微鏡を用いて、リボン状の金属ガラスPd40Cu30Ni10P20を観察した。リボンを曲げると、圧力をかけた側に結晶領域が現れた。この挙動は以前にも観察されていたが、高分解能X線顕微鏡を用いたことで、結晶化過程をより詳細に調べることができた。

この研究から、金属ガラス中で結晶化が起こるためには、圧力をかけられた側が圧縮されるだけでは不十分で、過冷却液体領域の広さも必要であることが明らかになった。過冷却液体領域とは、ガラス状金属が加熱されて液体になるときの温度から、結晶化するときの温度(一般的には室温よりかなり高い)までの温度間隔のことである。Yavari主任研究者らが調べたPd40Cu30Ni10P20では、この領域の広さが約100°Cもあったが、他の金属ガラスでは、この領域は非常に狭いか全く存在しないため曲げても結晶化は起こらず、亀裂が発生したり機械的破壊が起こることがわかった。

Yavari主任研究者らの研究結果は、さまざまな材料に広く応用できる可能性がある。「今回の研究では、理論予測とよく一致した実験結果が得られました。このことは、私たちのモデルに確信を与えてくれただけでなく、他の化学組成でも同様の過程が観測されることを示唆しています」とYavari主任研究者は説明する。このモデルは非晶質金属の特性に関して重要な基本的理解をもたらしたが、得られた結果にも今後有用な意義があるかもしれない。「金属ガラスが変形に対してどのように応答するかは、十分には理解されていません」とYavari主任研究者は言う。「私たちが今回報告したような結晶化現象は、材料の硬化と大きな関係があります。したがって、圧力下での金属ガラスの破壊を防止できるかもしれません」。

References

  1. Yavari, A. R., Georgarakis, K., Antonowicz, J., Stoica, M., Nishiyama, N., Vaughan, G., Chen, M. & Pons, M. Crystallization during bending of a Pd-based metallic glass detected by X-ray microscopy. Physical Review Letters 109, 085501 (2012). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。

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