金属ガラス: 水質汚染源の染料を脱色分解する

2012年11月26日

河川廃水の汚染源であるアゾ色素分子は、金属ガラス粉末で効率よく分解除去できる

廃水中の色素分子を効率よく分解する金属ガラス粉末の走査電子顕微鏡像
廃水中の色素分子を効率よく分解する金属ガラス粉末の走査電子顕微鏡像
 

© 2012 J.-Q. Wang
 

鮮明色が長持ちする合成色素は製造業者および消費者の双方にとって有用な特性である。しかしながら、合成色素化合物が廃水システムに流れ込み汚染物質に変化すると、この特性のために浄化が困難になってしまう。例えば、窒素二重結合に起因する各種の「アゾ」有色色素は、バクテリアによる分解、もしくは炭素収着処理による分解は共に困難となる。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のJun-Qiang Wang助手は、国内および米国の共同研究者らとともに、アモルファス状態のマグネシウム-亜鉛金属ガラス粉末を用いて、現行手法よりもはるかに高効率でアゾ色素を分解する方法について報告した1

アゾ色素を分解する最良の方法の1つは、マグネシウムや鉄などゼロ酸化状態にある純粋な「ゼロ価」金属を用いて窒素二重結合に電子を移動させ、その結合を開裂させることである。しかしながら、ゼロ価マグネシウムは水から有機汚染物質を除去するのに特に有効であるものの、耐腐食性が低く、最終的には水環境によって腐食消滅してしまう。材料研究者らは、それ故に、マグネシウムの高い反応効率を維持しながら低コストで腐食を低減する方法に着目している。

マグネシウムをほかの金属で合金化すると耐腐食性を向上させることができるが、それは原子が原子レベルで充分に混合している場合に限られる。この混合状態を得るために、Wang助手らは、るつぼ内でマグネシウムと亜鉛を溶解した後、急速成形して、薄帯(リボン)状の金属ガラスを作製した。このガラス状態では金属原子が均一かつ稠密(ちゅうみつ)に充填されているので、優れた耐久性を示す。

研究チームは次に、マグネシウム-亜鉛リボンを廃水処理に適した形状にするため、これを粉砕して微粉末にした。Wang助手は、この粉末化は斬新な方法であり、多くの利点があると話す。「リボンと比較して、粉末は表面積が非常に大きいため、反応性が高いのです」とWang助手は説明する。「粉末の形であれば、地中に注入して地下水中の汚染物質を処理させることができるかもしれません」。

顕微鏡観察の結果、マグネシウム-亜鉛粉末は分散性が良好で、凝集体を形成しないことが明らかになった(写真参照)。この性質は、水溶液中の合成汚染物質と反応させるのに理想的である。実際、このマグネシウム-亜鉛粉末で、アゾ色素溶液を10分以内に脱色することができた。これは、金属ガラスが頑丈な窒素二重結合を完全に開裂できることの明確な証拠である。

Wang助手によると、マグネシウム-亜鉛金属ガラス粉末は、アモルファス原子構造により耐腐食性が著しく向上しているだけでなく、市販の鉄粉の1,000倍を超える反応効率でアゾ色素を除去することができるという。「過酷な嫌気性環境中の有機水質汚染物質を低コストで効率よく分解できるマグネシウム-亜鉛金属ガラス粉末は、金属ガラスのさまざまな応用分野を開拓するきっかけになるでしょう」。

References

  1. Wang, J.-Q., Liu, Y.-H., Chen, M.-W., Louzguine-Luzgin, D. V., Inoue, A. & Perepezko, J. H. Excellent capability in degrading azo dyes by MgZn-based metallic glass powders. Scientific Reports 2, 418. | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。