バイオマテリアル: 骨再生の足場となるパターン

2012年09月24日

薬物を充填した微小ポリマー球を並べて作った微細パターンが、骨組織の修復における幹細胞の増殖と分化を促進する

微小球パターン作製過程の略図
微小球パターン作製過程の略図

© 2012 X. Shi

骨の健康は、骨芽細胞や破骨細胞をはじめとするさまざまな細胞が集合して機能性構造体を形成し、体内における骨に固有の機能(細胞増殖、分化、タンパク質分泌など)をうまく調節できるかどうかで決まってくる。しかし、腫瘍などの骨関連疾患による損傷があると、これらの巧妙な自己調節機能が働かなくなってしまう。この問題を解決するためには、細胞挙動を直接制御できる組織工学的手法を開発する必要がある。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のXuetao Shi助手とHongkai Wu教授は、香港や北京の共同研究者とともに、骨再生の足場として機能する微細パターンを開発した1。このパターンは、薬物やタンパク質分子を充填した多数のポリマー微小球を並べて、等間隔の溝の形にしたものである。

細胞挙動を調節する一般的な方法としては、生体内の化学シグナルを利用する方法と、足場となる表面形状を利用する方法があるが、いずれも単独では効果が薄いことがわかっている。前者は幹細胞の分化を調節して特殊化した細胞を生成できるが、細胞の空間的配列を適切に制御することは難しい。後者には、その逆の欠点がある。

研究チームは今回、この2つの方法を組み合わせて、微小球を並べたパターンを作ることにより、化学的刺激と物理的刺激を同時に利用できるようにした。微小球のパターンは、天然の骨表面や骨の外表面を包む膜と同じように、細胞を配列させた状態で増殖させた。「生体内の骨環境には、成長ホルモンをはじめとするさまざまな有益物質が含まれています。この環境を模倣するため、微小球を用いた薬物分子の封入・放出も行いました」とShi助手は付け加える。

Shi助手らはまず、乳酸-グリコール酸共重合体という生体適合性・生分解性ポリマーを含んだ高分子溶液と、薬物やタンパク質の水溶液を乳化剤の存在下で混ぜ合わせて、微小球を作った(図参照)。次に、微小な溝を掘ったテフロンの鋳型に微小球を堆積させ、溶媒を加えて微小球同士を密着させたあと、鋳型をテフロンスライドで覆って圧力をかけることによって、微小球が整列したパターンを作製した。

初期の実験から、溝の幅が狭いパターンの方が、広いパターンよりも細胞をうまく配列させることがわかった。また、微小球が親水性分子や疎水性分子を効率よく封入し、ゆっくり放出することも明らかになったため、研究者らは複数の薬物を同時に充填することにした。複数の薬物を充填したパターン上で培養した幹細胞は、高い骨形成マーカー値を示した。これは、骨芽細胞への分化が促進された証拠である。

化学的手法と表面形状を利用する手法を組み合わせたこの複合的な手法は、骨修復ばかりでなく、心筋組織再生治療を目的とした筋肉や血管関連の細胞の研究にも利用できる。「今後は、臓器や組織を再生させるため、天然組織を模倣した表面や、薬物や遺伝子を放出する機能を持つ足場材料の開発に重点を置いて研究を進める予定です」 とShi助手は話す。

References

  1. Shi, X., Chen, S., Zhou, J., Yu, H., Li, L. & Wu, H. Directing osteogenesis of stem cells with drug-laden, polymer-microsphere-based micropatterns generated by Teflon microfluidic chips. Advanced Functional Materials 22, 3799–3807 (2012). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。