金属ガラス: 粉末のなかにあった貴重なナノワイヤー

2012年07月30日

従来の金属粉末製造法が、金属ガラスナノワイヤーの生産を加速させる

金属粉末製造に用いられるガスアトマイズ法。るつぼのノズルから流れ出た溶湯流へ高速ガスを吹き付けると、溶湯流は粉砕されてナノワイヤーを含むさまざまな微粒子を形成する(差し込み図)。溶湯を融点以下に過冷却してガスアトマイズを行うと曳糸性が増大して大量のナノワイヤーが作製できる。
金属粉末製造に用いられるガスアトマイズ法。るつぼのノズルから流れ出た溶湯流へ高速ガスを吹き付けると、溶湯流は粉砕されてナノワイヤーを含むさまざまな微粒子を形成する(差し込み図)。溶湯を融点以下に過冷却してガスアトマイズを行うと曳糸性が増大して大量のナノワイヤーが作製できる。
 

© 2012 ACS

バルク金属ガラスは、並はずれた機械的強度、高い弾性、耐摩耗性というユニークな特性を持つため、マイクロメカニカルデバイスやナノスケール触媒の設計においても大きな可能性を持つ。金属ガラスを用いたナノスケール構造体は既に開発が進められているものの、その作製法はコストが非常に高く時間もかかり大量生産には向いていない。東北大学の原子分子材料科学高等研究機構(AIMR) の中山幸仁准教授、Chen Na助教と金属材料研究所の共同研究者らは、このたび、大量の金属ガラスナノワイヤーを作製する手法を開発した。この手法は安価で、1グラムの材料から少なくとも数億本のナノワイヤーを作製できる1

金属ガラスは、結晶性金属とは異なるアモルファス(非晶質)構造をとり、原子が密に詰まった構造は靭性が高く、機械的劣化によく耐える。一般的に金属ガラスは液体急冷法により作製されるが、この溶融/凝固過程における過冷却状態では溶湯の粘性が非常に高くなる。今回、この高い粘性が要因となる「曳糸性(えいしせい・細長い糸形状を形成する傾向)」を見出し、ナノワイヤーの形成と因果関係があることがわかった。

中山准教授らのチームは、金属粉末の製造によく用いられるガスアトマイズ法を利用して、ナノワイヤーを作り出せる条件を求めた。この工程では、るつぼのノズルから流れ出てきた溶湯に高速のガスをぶつけて粉砕し、さまざまな形状の微粒子にする(図参照)。研究者らは、溶湯を融点よりも低い温度まで過冷却することにより粘性を高めてから、ガスアトマイズを行った。肉眼では金属綿のように見えるが、この方法によって直径50–2,000ナノメートルの長い金属ガラスナノワイヤーが絡まったナノファイバーを形成することができる。

「ワイヤーの長さに対する直径の比(アスペクト比)は、溶湯の温度が融点よりも下がると指数関数的に増加します。」と中山准教授は説明する。ナノワイヤーのアスペクト比が溶湯の温度に依存することから、さまざまな金属ガラスから作られたナノワイヤーのアスペクト比を予測する「曳糸性のルール」を確立した。

研究チームはこれまで、Zr65Cu18Ni7Al10とFe76Si9.6B8.4P6という2種類の金属ガラスに重点を置いてきたが、現在は、白金やパラジウムなどの触媒活性のある元素を含むナノワイヤーを作製することを計画している。「貴金属ガラスナノワイヤーは、触媒研究に非常に大きな影響を及ぼすでしょう」 と中山准教授は言う。ナノワイヤーは比表面積が大きく、材料1グラム当たりの触媒活性が高い。これは、グリーンケミストリーの目標のひとつである。将来的に、磁性元素を用いて金属ガラスナノワイヤーを形成できるようになれば、外部磁場に対してワイヤーの高周波インピーダンスが応答するような小型デバイスの構築に役立つかもしれない。

References

  1. Nakayama, K. S., Yokoyama, Y., Wada, T., Chen, N. & Inoue, A. Formation of metallic glass nanowires by gas atomization. Nano Letters 12, 2404–2407 (2012). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。