構造欠陥: 粒界を理解する

2012年03月26日

原子欠陥と不純物の基礎がわかれば、材料の構造と特性の相関性が見えてくる

酸化マグネシウムの粒界で形成された規則正しい欠陥超構造の模式図。超構造は、酸素(赤色)、マグネシウム(小さい青色球)、不純物チタン(大きい青色球)と不純物カルシウム(オレンジ色)から構成される。
酸化マグネシウムの粒界で形成された規則正しい欠陥超構造の模式図。超構造は、酸素(赤色)、マグネシウム(小さい青色球)、不純物チタン(大きい青色球)と不純物カルシウム(オレンジ色)から構成される。

 

構造欠陥は、材料の力学特性や電気特性を決定づける要素のひとつである。この構造や性質を原子レベルで理解することは、材料物性の発現メカニズムの解明や材料制御プロセスの構築に向けて非常に重要な意味を持つ。そのためには、構造欠陥の三次元構造や化学組成を精密に測定する必要がある。しかし、多結晶材料の場合、隣り合う結晶の境界(粒界)に形成される欠陥を詳細に観察するのは非常に困難であった。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のZhongchang Wang(王中長)助教と幾原雄一教授をはじめとする研究者らは、高性能電子顕微鏡を用いた分光法と第一原理計算を併用して構造欠陥を調べる方法を開発した1

「天然材料は多結晶であることが多く、その特性は粒界で決まります」と幾原教授は説明する。粒界とは2つの結晶ドメイン、つまり「結晶粒」の界面のことで、不純物や空孔などの原子欠陥を捕獲して複雑な構造変化を起こす。しかし、自己捕獲された粒界欠陥の分布と役割を解明することは困難を伴う。欠陥の濃度が非常に低く、従来の電子顕微鏡技術では十分な化学的情報が得られないからである。

これらの問題を克服するため、研究者らは異なる種類の走査透過電子顕微鏡技術に、電子エネルギー損失分光法と高精度密度汎関数計算を組み合わせた方法を考案した。電子顕微鏡の環境設計においても、機械的振動や磁場の影響を受けないよう、細心の注意を払った。

研究者らは酸化マグネシウムを研究対象材料に用いた。酸化マグネシウムは工業的に重要な材料であり、長年にわたって研究されてきたが、原子スケールの粒界構造は依然として不明であった。研究チームは単一粒界を制御して調べるため、異なる結晶学的方位をもつ2個の結晶を切り出し、特定の表面同士を接合して「双結晶(バイクリスタル)」を作製した。

電子エネルギー損失分光と透過電子顕微鏡計測によって、不純物チタンと不純物カルシウムが粒界で偏析することが明らかになった。さらに重要な発見は、これらの不純物が酸化マグネシウムの特定の原子サイトに拡散・偏析し、原子レベルで直線的な粒界に沿って周期的な超構造を形成することだった(図参照)。実験と理論計算の両結果から、粒界はこのような規則的な欠陥配列構造の形成によって安定化されることが実証された。また、詳細な解析によって、カルシウムとチタンが、マグネシウム原子ではなく酸素原子と結合していることも明らかになった。

「原理的に、この手法は多くの物質系における多様な欠陥に応用できると思われます」と王助教は言う。「主な利点は、各種技術を組み合わせることにより、構造欠陥領域から点欠陥の情報を原子レベルで抽出できることと、量子レベルの構造と特性の相関に関する知見も得られることです」。

References

  1. Wang, Z., Saito, M., McKenna, K. P., Gu, L., Tsukimoto, S., Shluger, A. L. & Ikuhara, Y. Atom-resolved imaging of ordered defect superstructures at individual grain boundaries. Nature 479, 380 (2011). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。