マイクロミラー: 輝きはじめる金属ガラス

2012年01月30日

機械的強度に優れた金属ガラスは、回転ミラーなどのマイクロメカニカルデバイスの部品として理想的である

回転する金属ガラスミラー。ミラー表面とねじり軸は1枚の金属ガラス膜から作製されており、ミラー膜はシリコンに支持されている。写真は、回転するミラー(左)とねじり軸の拡大図(右)を示している。
回転する金属ガラスミラー。ミラー表面とねじり軸は1枚の金属ガラス膜から作製されており、ミラー膜はシリコンに支持されている。写真は、回転するミラー(左)とねじり軸の拡大図(右)を示している。
 
 

© 2011 Optical Society of America (左の画像)


 

従来からシリコンは、マイクロメカニクスが技術革新を重ねるうえで好んで用いられてきた材料だ。今日ではシリコンチップ上で複雑な細工が施され、新しいタイプの微小デバイスが作られている。例えば、微小シリコンカンチレバーは加速度センサーとして広く利用されており、シリコン製のマイクロミラーはレーザープロジェクターや内視鏡などに搭載され、広い範囲にわたって光線を反射・走査するのに利用されている。しかし、シリコンはもろいため、応用範囲が限られるという欠点がある。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のJae-Wung Lee助手、Yu-Ching Lin助教および共同研究者らは、国内およびドイツの研究機関と共同で、シリコンより靭性の高い代替材料として硬い金属ガラスに着目し、高性能マイクロミラーを開発した1

金属ガラスの外観はほかの金属と似ているが、その構造は普通の窓ガラスとそれほど変わらない。規則正しい構造を持つ結晶とは異なり、原子がランダムに配置されている金属ガラスはシリコンよりはるかに強く、一部の鋼鉄よりも強い。また、金属ガラスは変形せずに重い荷重に耐えることができるため、小さな部品に繰り返し強い力がかかるマイクロメカニカルデバイスの材料として最適である。動作サイクルを何度も繰り返しても、金属ガラスはほとんど損傷しない。

研究チームは、ミラーの回転軸となる2本のトーションバー(ねじり軸)の間に円板を配置して、ミラー構造体を作製した(図参照)。トーションバーは全体が金属ガラスでできているが、円板はシリコンフレームで固定された金属ガラス膜である。

研究チームが今回用いた金属ガラスは、鉄の含有量が多いため磁性を示す。「よって、外部磁場でマイクロミラーを作動させ、マイクロミラーの設計と作製過程を簡略化することができるのです」とLin助教は説明する。さらに、金属ガラスは優れた弾性と強度を持ち合わせているので、ミラーの傾斜角を大きくすることもできる。振動する外部磁場と共鳴したミラーは、磁場に従って1秒間に300回以上回転したが、損傷は全く見られなかった。この動的なモードでは70°を超える傾斜角が確認されており、より大きな静磁場をかけた時にはミラーの傾斜角は270°にもなった。

金属ガラスをマイクロメカニカルデバイスの部品として広く利用するためには、さらなる技術開発が必要だ。「金属ガラスに適用できるマイクロメカニカル加工技術は、まだ少ないのです。この次は、金属ガラスのエッチング技術を開発して、より小さく、より汎用的なパターンを実現したいと考えています」とLin助教は言う。ユニークな機械的特性を持つ金属ガラスは、将来、マイクロメカニカルデバイス分野でさらに重要な役割を果たしそうだ。

References

  1. Lee, J.-W. Lin, Y.-C., Kaushik, N., Sharma, P., Makino, A., Inoue, A., Esashi, M. & Gessner, T. Micromirror with large-tilting angle using Fe-based metallic glass. Optics Letters 36, 3464-3466 (2011). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。