酸化物界面: 形成過程を原子レベルで探る

2011年12月26日

原子が一つ一つ積み上がって界面を形作る様子が、走査トンネル顕微鏡により手に取るようにわかってきた

チタン酸ストロンチウム表面の典型的な走査トンネル顕微鏡像(上)。ペロブスカイト酸化物からなる界面のモデル図(下)。
チタン酸ストロンチウム表面の典型的な走査トンネル顕微鏡像(上)。ペロブスカイト酸化物からなる界面のモデル図(下)。
 

© 2011 ACS
 

2つの異なる材料を貼り合わせることにより,それら自身とはまったく異なる物性がその界面で発現する。一例がアルミン酸ランタン(LaAlO3)とチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の界面であり,このような遷移金属酸化物のヘテロ界面が特異な物性を示すことが近年実証されている。どちらの材料もバルクでは絶縁体だが,その界面において非常に高い導電性を示し,一定の条件下では超伝導にもなるのである。こうした酸化物材料の組合せの候補として様々な物質が存在し,新奇かつ多彩な機能をもつデバイスへの応用が期待されている。そのためには、界面形成やその電子構造を原子スケールで理解し制御することが不可欠であるが、これまでの研究は主として単位格子レベルに限られていた。

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の清水亮太助手,一杉太郎准教授および共同研究者らは,上記のような酸化物における界面形成過程を原子レベルで解明するため,高分解能走査トンネル顕微鏡とパルスレーザー堆積システムを組み合わせた装置を開発し1、酸化物界面が形成される初期過程を詳細に調べた2

研究者らは,ぺロブスカイト型酸化物として代表的なSrTiO3に着目し,ホモエピタキシャル成長(基板となる結晶の上に,同じ材料の薄膜結晶を成長させること)の様子を原子レベルの空間分解能で調べた。まず原子が整然と並んだSrTiO3基板表面を準備する手法を開発し,続いてパルスレーザー堆積法を用いてSrTiO3薄膜を成長させた。「この基板表面は原子構造がすでに明らかであること,幅広い酸素分圧で再現よく準備できることから,原子を一つ一つ積み上げながら酸化物薄膜や界面を作製する手法の出発点として理想的なものです。そして、様々なぺロブスカイト酸化物の成長過程を原子レベルでモニターすることも可能になります」と清水助手は説明する。

研究チームは、SrTiO3薄膜を成長させたところ,元の基板表面と同一の原子構造をもつ島状テラスの観察に成功した。これにより、基板と薄膜の界面では,原子レベルの連続性を保持した状態で成長が進むことが明らかになった。

今回の成果は,多彩な酸化物材料においても同様の成長が可能であることを示唆している。「私たちは現在,異なる材料間での成長過程や界面形成を原子スケールで明らかにするために,酸化ストロンチウム(SrO),アルミン酸ランタン(LaAlO3),マンガン酸ランタン(LaMnO3)といった酸化物材料にも取り組んでいます」と清水助手は話す。「このような研究から,多機能性をもつ新奇な高品質薄膜,ヘテロ界面が誕生するかもしれません」。

References

  1. Iwaya, K., Shimizu, R., Hashizume, T. & Hitosugi, T. Systematic analyses of vibration noise of a vibration isolation system for high-resolution scanning tunneling microscopes. Review of Scientific Instruments 82, 083702 (2011).

  2. Shimizu, R., Iwaya, K., Ohsawa, T., Shiraki, S., Hasegawa, T., Hashizume, T. & Hitosugi, T. Atomic-scale visualization of initial growth of homoepitaxial SrTiO3 thin film on atomically ordered substrate. ACS Nano 5, 7967 (2011). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。