フォトボルタイクス: 有機太陽電池を安価に

2011年10月31日

官能基化フラーレンの新しい合成法が、有機太陽電池の低コスト化を可能にするかもしれない

図1: C60フラーレンは炭素でできた球形分子である。これを官能基化することにより、太陽電池に利用できるようになる。
図1: C60 フラーレンは炭素でできた球形分子である。これを官能基化することにより、太陽電池に利用できるようになる。
 

 

再生可能エネルギー源の需要が高まる中、シリコンではなく有機材料を使った次世代太陽電池の開発に期待が集まっているが、光起電力材料の効率を向上させる新しい方法を考案することが重要な課題となっている。東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のTienan Jin(金鉄男)准教授が率いる研究チームは、このたび、中国の研究者と共同で、官能基化「フラーレン」を高収率・低コストで簡単に合成する新しい手法を開発した1。この研究成果は有機太陽電池の低コスト化を可能にすると期待されている。

太陽電池は、電子供与体分子と電子受容体分子の間で電荷移動が起こる系を利用して、光から電気をつくっている。炭素原子でできたサッカーボールのような球状分子フラーレンは、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)の形で、電子受容体分子として有機太陽電池に広く利用されている。しかし、この複雑な分子は製造コストが高く、現時点では、コストを抑えるための試みはうまくいっていない。Jin准教授らは、C61誘導体の代わりに、安価なフラーレンC60を利用することで新しい電子受容体分子を開発し、コストを下げられないかと考えた。しかし、C60を官能基化してC61誘導体と同じレベルの電子受容体性能を実現するためには、従来とは異なる合成手法の開発が必要であった。

研究者らは、C60フラーレン(図1)にアルキル鎖を結合させて官能基化した。このタイプの化学修飾は、過去にもマグネシウムやリチウム系の試薬を用いて行われていたが、多重アルキル化が起こりやすかった。有機太陽電池に最も適したモノアルキル化フラーレンを合成するには、より温和で、選択性の高い条件が必要である。「私たちは、遷移金属触媒を利用して、炭素-炭素多重結合での分子変換法を何種類も開発してきました。今回も同じようにしてC60を官能基化できないか調べてみようと思ったのです」とJin准教授は説明する。

研究者らは、考えられる触媒と反応条件を徹底的に探索した結果、C60フラーレンにアルキル鎖を結合させるには、コバルト系化合物が最も効率のよい触媒であることを見いだした。コバルト触媒とマンガン還元剤の溶液に、C60とハロゲン化アルキル化合物を加えることによって、モノアルキル化C60フラーレンが2日で88%の収率で得られた。Jin准教授らは、この高効率合成法を利用して、亜鉛ポルフィリンや枝状デンドリマーを持つフラーレンのほか、ダンベル型のフラーレン二量体さえ合成することができた。いずれも、従来法での合成が困難なフラーレンである。

新しいフラーレン誘導体を用いてバルク・ヘテロ接合構造の単純な太陽電池を作製したところ、従来のPCBM電子受容体を用いた同様の太陽電池よりも高い光電変換効率を示した。「今回の有望な結果を踏まえて、これからも太陽電池に応用できる新しいフラーレン誘導体を設計、合成していく予定です」とJin准教授は話す。

References

  1. Lu, S., Jin, T., Bao, M. & Yamamoto, Y. Cobalt-catalyzed hydroalkylation of [60]fullerene with active alkyl bromides: selective synthesis of monoalkylated fullerenes. Journal of the American Chemical Society 133, 12842–12848 (2011). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。