ナノマテリアル: 触媒コンバーターにクールなナノキューブを

2011年07月25日

低い動作温度で多くの酸素を貯蔵できる酸化セリウムの「ナノキューブ」は、自動車排ガスのさらなる浄化を可能にすると期待される

図1: 1辺の長さが10 nmのCeO2ナノキューブの透過電子顕微鏡像
図1: 1辺の長さが10 nmのCeO2 ナノキューブの透過電子顕微鏡像

© 2011 ACS

自動車の排ガス用触媒コンバーターにはレアアース(希土類)や貴金属が用いられているが、酸化セリウム(CeO2)は重要な役割を果たしている。ガソリン燃焼による排ガスの量と組成はエンジンの燃焼室内の酸素量によって決まるが、CeO2は分解することなく酸素原子を取り込んだり放出したりできるため、触媒コンバーター内の一酸化炭素の酸化(CO→CO2)と一酸化窒素の還元(NO→N2)の両方に寄与し、排ガスを低減するうえで極めて重要である。しかし、現在触媒コンバーターに使用されているCeO2は結晶が大きく、結晶表面に蓄えられる酸素の量が限られているので、その排ガス浄化能力は十分とは言えない。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の阿尻雅文教授らは、有機分子を使ってCeO2結晶のサイズを精密に制御することにより、一般的な触媒の3倍近い酸素貯蔵容量を示すCeO2「ナノキューブ」を合成した1

研究チームは、このユニークなサイコロ型結晶を合成するために、超臨界水熱合成という技術を利用した。CeO2前駆体、炭化水素と水を耐圧容器内に閉じ込めて400 °Cまで加熱すると、超臨界条件において、水溶液中で有機分子は金属イオンと均一に混合する。微小なCeO2結晶が生成すると最も反応性の高い結晶面に有機分子が結合し、その方向への結晶の成長を阻害する。透過電子顕微鏡を用いた観察により、1辺の長さが10ナノメートル未満の綺麗なCeO2キューブが形成されることが明らかになった(図1)。

こうして得られた微小なCeO2キューブの酸素貯蔵容量を調べたところ、優れた温度依存特性が明らかになった。不規則な形をした従来のCeO2結晶が400°Cまで加熱しないと酸素を取り込まないのに対し、阿尻教授のCeO2ナノキューブは、はるかに低い150 °Cでも大量の酸素を吸収したのだ。この結果は、ナノキューブの触媒活性が非常に高いことを示している。

「ある材料の酸素貯蔵容量は、材料中での酸素の動きやすさと直接関係しています」と阿尻教授は言う。通常、金属酸化物の結晶の中で酸素原子が移動するには、高温が必要である。しかし、CeO2ナノキューブは低い温度で高い移動度を示すので、より広い動作条件にわたって排ガスを浄化できる可能性がある。これにより、自動車の性能を上げるだけでなく、排ガス浄化触媒で必要な貴金属の量を減らせるかもしれない。

阿尻教授によると、ナノ結晶の露出面を制御することがCeO2の触媒活性を向上するカギであるという。研究チームは現在、ほかのキャッピング分子や異なる超臨界反応条件から全く新しい触媒合成法を開発しようと研究を続けている。

References

  1. Zhang, J., Kumagai, H., Yamamura, K., Ohara, S., Takami, S., Morikawa, A., Shinjoh, H., Kaneko, K., Adschiri, T. & Suda, A. Extra-low-temperature oxygen storage capacity of CeO2 nanocrystals with cubic facets. Nano Letters 11, 361–364 (2011). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。